ログイン
詳細
あきばん★にゅ✦β✦˖°。

窓の外からはパトカーのサイレンとジングルベル。 ここは表通りの音がよく聞こえる...。 『親父、もう少し飲めよ。』 『ああもらおうか。』 ニャーオ... 『お前猫でも飼ってるのか?』 『いや飼ってないよ。ここ五階だぜ。』 席を立ちブラインドを開ける。 『やっぱり居ないよ。隣のミケかも知れない。』 振り向くと親父の姿はもう無かった。グラスには半分だけ芋焼酎が残っていた...。 目が覚める。 俺はソファで寝ていた。 23:35。まだクリスマスにもなっていない。 『そうか。日本じゃ今日が命日か...。』 キッチンに行ってみたがテーブルには何も無かった。 new portを吸いながら電話を掛ける。 『あ、母さん俺だけど...オレオレ詐欺じゃないってw』 親父の事は言わなかった。夢の話だ。 『...今年は日本で新年を迎えようと思ってさ。うん、そう。』 『それから親父の命日、毎年一人で墓参りさせてごめん。今年は俺も行くから。年明けになるけど』 『こっちかい?ああニューヨークは何時も通りホワイトクリスマスさ...』 10分ほどで電話を切った。 さて飛行機は取れるかな? 今仕事をしているプロダクションに頼んでみるか。 『ああトニーか。さっき1曲送ったよ。あれで最後だ。 それから今年は日本に帰るから。え?ダメ?いやいや帰るよ日本人にはクリスマスより正月の方が大事なんだよ!それから航空券も頼んだから。そう年内で頼むよ。』 トニーは怒っていた。クリスマスに何をさせるんだとね(笑) 程なくしてスマホにチケットが届いていた。 何だかんだ言っても、ちゃんとやってくれるいい奴さ。 時計を見ると24時を過ぎていた。 出発の準備をしていると彼女、今お付き合いしているメアリーから興奮した声で電話が掛かって来た。 ここアメリカに来て6年。右も左も分からなかった俺の為に嫌な顔して全部世話してくれたいい女だ。付き合いは5年目になっていた。 『OKメアリー。俺と一緒に来てくれないか?』 『ああ、後はこっちで準備するから。俺もさ愛してるよ。メアリー...ありがとう。』 またトニー頼むか(笑) グラスを二つ用意し酒を注ぐ。 乾杯。 チン♪ 『ふう。メアリーのお陰で母さんの夢も叶いそうだよ。』 『親父、何かあっちでサンタクロースでもやってるのかい?』 部屋に戻り机の引き出しを開けると、そこには茶色く変色した包み紙に覆われたグローブと、真新しい左利き用グローブが並んでいた...。 今日はクリスマス。 隣の部屋では仲間が集まりパーティーが始じまった。下の通りには大きなプレゼントを抱えた男が雪あかりの中家路を急いでいる。 そして向かいの窓辺に飾られたツリーから青や白の灯りが点滅しているのが見えた。 今夜、雪のように降り注いだ小さな奇跡。 明日になればウィンドーの飾りのように消えてしまうのだろうか...。

前へ次へ