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編集者という病い〔集英社文庫〕見城徹 解説(小池真理子)のとおり、“見城徹の過去”を凝縮させた一冊。共同体幻想を壊し続ける男の人生が書かれている。 『悲惨の港を目指す』『新たなる無名』『死ぬために生きる』見城さんからよく聞く言葉が、様々な場面、トーンで語られる。 苦しむことは決して無駄にならない。心も筋肉と同じで、動き苦しんだ分だけ、鍛えられる。だから自分の不安や恐怖にとことん付き合えばいい。そして一歩踏み出すときには「ロッケンロール!」と叫んで行動するといい。心を両極端に振り切る。もう2度と繰り返したくないという程に自分を追い込むことができれば、それは眩い輝きを放っている。過去を振り返るとそれに気づく。 不安が無いと、全力は続かない。だから『新たなる無名』を求める。笑って死ねるなら今すぐにでも死ぬ。死ぬのが怖いから仕事と恋愛に全力を尽くす。 人生とは“死ぬまでの時間”であり、“良く死ぬために生きている”ということは、事実である。一時の気の迷いでは無く、悔いなき死を笑顔で迎えることがどれほど困難なことか。そのためには、考え尽くし、やり尽くし、疲れ尽くすしかない。身も心も、動くと何かが始まる。 男を漢にする読書でした。

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ikutama読書記録
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    またうど〔幻冬舎〕村木嵐
    新聞広告欄をみて購入。
    田沼意次。600石の旗本から57000石の老中になり、強い意思で数々の政策を実行実現させたからこそ、良くも悪くも「田沼時代、田沼の政治」と歴史に個人名を刻む。
    どれだけ人の心を動かすことに長けた人だったのだろう。田沼意次に更に興味を持った。読み終えて、心地よい充実感と新たな好奇心、歴史小説の醍醐味を味わった幸せな読書時間だった。

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    ある漢の生涯〔幻冬舎文庫〕石原慎太郎
    まさに別世界の体験。ドキドキしながら、一気に読了。危う過ぎて目が離せない。人も動物、死ねば終わり。命を張ってナイフで秩序を作る。何に命を張るのか、それが漢の意地。人知れず命を懸けて勝負する漢の強さに魅せられた。
    漢の強さとは、勝負の匂いに敏感であること、痩せ我慢できること、寛容であること。
    漢は修羅に負けない強さを磨かなければならない。

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    天才〔幻冬舎文庫〕石原慎太郎
    田中角栄の金権政治を真っ先に否定した石原慎太郎。角栄をただの金権政治家として片付けないフェアな漢気を感じた。
    幼い頃、汗水垂らしてトロッコを押した角栄は、貧しくも力強い当時の民衆の心を掴んだ。政治家が持つの力を100%使い切り、高速道路と新幹線、空港で「地方を繋ぐ」という構造は実現した。しかしアメリカと司法という壁に潰された。
    出会う人に「こいつは話せる奴だな」と思わせる角栄、その力にたまらない魅力を感じた。

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    人間の証明〔リトルモア〕角川歴彦
    見城さんが、日本の全国民が必読すべきと評した。その理由が知りたくて読んだ。
    否認や黙秘をする限り、心身を疲弊させる勾留が続く。検察、警察、拘置所、メディアが一体となって人間を追い込むシステムは、もはや自浄作用を失い、内側からでは変えられない。その痛みを経験した人間が問題提起をしなければ、日本の未来は救われない。
    メディア、検察、米国と憲法。虎の尾を踏み、社会から抹殺される数多の日本人がいる。角川歴彦さんは全生命を懸けて、強大な権力に立ち向かい、日本を変えようとしている。見城さんはその姿に心打たれたのかもしれない、そう思った。

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    五木寛之セレクション 恋愛小説集〔東京書籍〕
    対談が気になり購入。見城さんからの25通の手紙の末、連載が始まった「燃える秋」。ペルシャ絨毯の秘める物語に魅せられた女性の物語に、三島由紀夫の金閣寺とは違う“女性の美学”を感じた。また、小説の中で表現されるイランとペルシャ絨毯の“魅惑的な美”に酔いしれた。
    「冬のひまわり」。長い時の流れに取り残されたような登場人物の忍耐力と、誰を応援したらいいのかわからなくなるような、リアルな人間模様に魅了された。
    恋愛小説はあまり読んだことが無い私だが、2作ともほぼ一気に読んだ。贅沢な時間でした。
    そして、2作を読んで辿り着いた見城さんと五木さんの対談。リアルな人間ドラマと哲学は格別でした。私ももっと“物語”を意識したいと思いました。

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    三流シェフ 三國清三〔幻冬舎〕
    三國さんの力強い生き方が魅力的だった。どんどん人に関わり、物怖じせず、仲良くなる。目をキラキラさせながら大波に一直線に向かっていく度胸で出会う人の心を動かしていく。三國さんの洞察力と繊細さ、決断力と根性、手際の良さがあれば、料理に限らず、何をしても結果を残したのではないか、と思ってしまう。
    世界の名だたるフランス料理店を渡り歩くエピソードは爽快だった。それぞれの個性的なシェフの生き様に狂気と美を感じた。また、料理の哲学、料理人が本を出す意味等、料理人ならではの視点は大変興味深いものだった。
    タオルでフライパンの練習をする、鍋磨き等、料理人の厳しい世界と、料理に全身全霊を懸ける漢のプライドを垣間見ることができる一冊だった。

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    知の編集工学 松岡正剛〔朝日文庫〕
    編集者の哲学に触れたくて購入。題名の“編集工学”の通り、理系的視点で書かれている。
    情報量が増す現代社会で生きるには編集能力が鍵となる。編集を情報を扱う技術と考え、“学問”として編集技術を追求する。編集に関する人類の歴史や文化、エピソード、学説が多数紹介されている。中でも「中世の人は黙読ができなかった」という話には驚いた。また、「花の蜜と昆虫のセンサーは情報化学的には同じもの」という話にロマンを感じた。本格的な編集哲学や学説は、大学入試の現代文のようで、私には質量ともにキャパオーバーの部分もあった。
    「境界が物語を生む」「熱狂と困難が編集の本質」、”原点”は、見城さんと共通するものを感じたが、この本は編集を情報加工の技術として捉え、情報過多の現代社会で苦しむ人を救う技術を模索する。違う視点で書かれた本が新鮮であると同時に、見城さんがブレずに伝え続けている意味を更に深く理解するきっかけにもなりました。

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    葉隠入門〔新潮文庫〕三島由紀夫
    「葉隠」は江戸時代中期に佐賀鍋島藩で書かれた武士の秘伝書。『二十数年間、読み返す度に感銘を受け続けた唯一の本』と自認する三島が「葉隠入門」を書いたのは自決の3年前。吉田松陰の講孟剳記のような形式で三島の葉隠に対する意見が刻まれている。
    葉隠の最も有名な一句は『武士道というは、死ぬ事を見付けたり』。生と死の関係についてポジティブに思案する。美しく死ぬために美しく生き、美しく生きるために美しく死ぬ。死を考えることは、生を考えることと同じ。「人間が行動を過るとすれば、死ぬべきときに死なないこと」と葉隠に書かれている。死を意識しないと、生に飽きる。平穏な世では“死を意識”する事が、精神衛生の必要だと三島は説く。境界にいる者だけが真に両者の価値を知るのだ。
    孤高と調和、威厳と恭順、葉隠は矛盾する両極を行き来し、一歩ずつ思考を前に進めていく、実用書である。

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    編集者という病い〔集英社文庫〕見城徹
    解説(小池真理子)のとおり、“見城徹の過去”を凝縮させた一冊。共同体幻想を壊し続ける男の人生が書かれている。
    『悲惨の港を目指す』『新たなる無名』『死ぬために生きる』見城さんからよく聞く言葉が、様々な場面、トーンで語られる。
    苦しむことは決して無駄にならない。心も筋肉と同じで、動き苦しんだ分だけ、鍛えられる。だから自分の不安や恐怖にとことん付き合えばいい。そして一歩踏み出すときには「ロッケンロール!」と叫んで行動するといい。心を両極端に振り切る。もう2度と繰り返したくないという程に自分を追い込むことができれば、それは眩い輝きを放っている。過去を振り返るとそれに気づく。
    不安が無いと、全力は続かない。だから『新たなる無名』を求める。笑って死ねるなら今すぐにでも死ぬ。死ぬのが怖いから仕事と恋愛に全力を尽くす。

    人生とは“死ぬまでの時間”であり、“良く死ぬために生きている”ということは、事実である。一時の気の迷いでは無く、悔いなき死を笑顔で迎えることがどれほど困難なことか。そのためには、考え尽くし、やり尽くし、疲れ尽くすしかない。身も心も、動くと何かが始まる。
    男を漢にする読書でした。

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    大河の一滴〔幻冬舎文庫〕五木寛之
    小説だと思っていたが、随筆。しかし、読み終えてみると、小説(物語)を体験したような感覚。人の命は大河の一滴。大きなリズムに向かって時間を旅する小さな一滴。
    「一見、出来損ないに見える1本のライ麦が土の中でシベリア鉄道の1.5倍もの根を張る」というエピソードに心打たれた。“生きること”それ自体がどんなに、大変で力強い営みなのか、こんなに丁寧に優しく書かれている本は無い。『息絶えた秩序より、生きて命を保つ無秩序を愛する』命はただ生きているだけで尊い。
    「遠慮せず本音を書く」その願望と自己嫌悪。見城さんに迫られ、執筆を決めた心情が、文庫版あとがきに書かれている。『なにかひとつの物語を信じるということによって、人間は少しだけましな動物になったのではないか』作家の葛藤の末の覚悟。
    この本に感謝します。