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吉田真悟

<ホワイトさんが朝日新聞 令和4年2月13日(日)掲載より 起こした文章> 作家・石原慎太郎とは── 『弟』『天才』など手がけた見城徹さんに聞く  けんじょう・とおる  1950年生まれ。75年に角川書店に入社、『野性時代』副編集長や『月刊カドカワ』編集長を歴任。93年に幻冬舎を設立。 「獰猛な異物」 創作の源泉に  二人三脚の始まりは、バラの花束と『太陽の季節』の暗唱だった。石原慎太郎さんを口説くため、見城徹さんが用意したもの。『弟』『天才』といったヒット作を世に送り出した幻冬舎社長の見城さんが取材に応じ、石原さんについて語った。    ──多忙な石原さんに会うのは大変だったそうですね。  高校時代に石原さんの短編群を読んで、眠れなくなるくらい衝撃を受けた。編集者として、絶対に一緒に仕事をすると決めていた。石原さんの年の数の44本のバラを手渡し、必死になって『太陽の季節』を冒頭から暗唱したら、「わかった、わかった。君とは仕事するよ」と言ってくれました。  ──それから17年後に幻冬舎を立ち上げました。  書いて欲しいテーマが三つあった。ひとつは裕次郎さんのこと。それが3年後に初の私小説『弟』になった。もう一つは、老残。肉体の衰えと老いの悲しみを書いて欲しいと言ったら、エッセー『老いてこそ人生』に昇華した。三つ目は総理を目指していた政治家、中川一郎氏の死。派閥の長がなぜ自殺したのかを描くことで、政治の宿命をあぶり出すことになる。しかしそれは「墓場まで持って行く」と断固としていた。十数年たって田中角栄ではどうかと提案し、2016年に『天才』ができた。    ──二人は政治的に対立していました。  同じ自民党でありながら金権政治批判の急先鋒(きゅうせんぽう)だった石原さんが、一人称で書くと言いだして、びっくりした。 「年を取ってはじめて田中角栄の偉大さがわかってきた。政治の全てが角栄にある。その視点に立ちたい」と。日本をダイナミックに動かした政治家の功罪を、その人になりきって書くという発想。天才だと思いました。題は、角栄も天才なんだから『天才』でしょう、と僕が決めました。 共同体への絶望 乗り越えるため  ──作家石原慎太郎の源泉はどこにあるとみますか。  一貫していたのは「価値紊乱(びんらん)者」だったということ。共同体とは制度でありルールであり倫理。他人が勝手に取り決めたものです。「反共同体」ではなく「非共同体(個体)」の人だったんです。  彼の体内にはわき上がる獰猛(どうもう)な異物があり、少年時代から絵や文章を書くことで飼いならしてきた。小説という観念の世界で「行為(犯罪)」と「死」を書くことは「自己救済」になる。だから人の心を打つんです。    ──なぜ政治家になったのでしょう。  いくら小説を書いても現実=共同体は変わらないという無力感からのいらだち、それを変えたいという誠実な思いが、政治の世界へと向かわせた。そのためには与党、つまり自民党に入るしかなかった。非難されることなど考えない。ある意味原始的な野性の政治家です。  作家から政治家になるということは、少年が男に、子が父に、王子が王になるということ。王子のままでいられたら幸せだが、王になり、矛盾を引き受ける。最大公約数の幸せを実現するためには「悪」にも手を染めないといけない。    ──ごく最近まで執筆していたそうですね。  2年前に膵臓(すいぞう)がんを告知されてからも小説を次々送ってきた。昨年12月9日に、待望していた『石原慎太郎短編全集 𝐈・𝐈𝐈』を届けたら、抱きしめて涙をこぼしていました。「これが俺の遺作になるな」と寂しそうに笑っていた。  死への衝動をあそこまで書いた初期の短編群の鮮烈さ、ラジカルさは古びていないですよ。だから、共同体のまっただ中で鬱積(うっせき)する憤怒を抱えた若者に読んで欲しい。現実に突き当たって苦しんだり絶望したりしたが、類いまれなる想像力で乗り越えようとした石原慎太郎という作家がいた。その情熱といらだち、絶望と恍惚(こうこつ)、その息苦しさや切なさまで感じて欲しい。文学者としてまっとうに評価されるべきだと思っています。 (聞き手・吉村千彰) 朝日新聞 2022年(令和4年)2月13日(日)掲載より ( 。・_・。)φ_ <2022/02/13 見城先生の投稿> 朝日新聞の朝刊です。[朝日新聞デジタル]の僕のインタビューを記者が多分、苦労して要約したもの。しかし、「個人的現実と社会的現実のクラッシュ」とか「嫌悪から発する殺人への衝動」と言った石原文学のキー・ワードが入らなかった。まあ、[配信記事]ではなく[新聞]だから無理ないかな。

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千冊回峰行中!
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  • 吉田真悟
    吉田真悟
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    No.733 
    『八日目の蝉』角田光代著
    (2007/3/25 中央公論新社)

    2024/05/14 
    (Amazon Audibleで3/19視聴)

    不倫相手の子供を衝動的に盗み出し、数年も連れ回す主人公に徐々に情が移っていくが、いつ捕まるのかと緊張感がずっと続いた。

    母親ごっごに付き合わされるが、決して不快ではない。子を守る母親として主人公の「希和子」になりきり、行く先々で世話してくれる他人の人情に触れ、逃亡生活をハラハラしながら追っかけて、最後は誘拐が発覚して捕まってしまい一旦ホットするも、今度は「薫」(子供)の目線でその後の第二章が始まる。希和子と同じような不倫をしてしまう薫に、またかといった諦めを感じる。

    希和子と薫の最後のすれ違いについても、やきもきしつつ諦めてしまう。
    そこで出会ったなら、お互いを十分に理解できただろうかな?

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    No.734
    『キングスマン ファースト・エージェント』
    『キングスマン』
    『キングスマン ゴールデン・サークル』
    3作品、3/20に観覧終了(Amazon Prime Video)

    本気で作った紳士の国の映画だった。
    何度も観たが、痛快で面白い。金をかけているのがよくわかる。
    そして人が簡単に死ぬため罪悪感がない。そこが良い。

    「ファーストエージェント」
    1914年当時(どこまでが本当か私にはわからないが)
    凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公が、
    英国国王ジョージ5世の協力の下、高級テーラー内に国家権力から独立した諜報機関「Kingsman」を作る話。

    ・イギリス国王のジョージ5世、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世、ロシア皇帝のニコライ2世がいとこ同士だったとは知らなかった。
    ・「羊飼い」を名乗る謎の男が世界を混乱させるべく秘密会議を開いていたが、ロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイマタ・ハリ、ロシアの革命家レーニンといったそうそうたる歴史上の人物が登場する。後に世界を震撼させるキーパーソンたち。なのでなかなか、スケールの大きい時代がかったスパイアクション映画となっている。

    「キングスマン」
    キングスマンのメンバーの一人が冒頭で死んでしまい、その後任を危険な試験で選抜する。かつて自分の父がメンバーだったエグジーがもう一人の女性と選ばれるが、スマホを使い世界中を暴力的に洗脳する悪と戦うといった超アクション大作である。杖や傘などの独特の武器や防御アイテムが面白い。エグジーの成長と義理の父親との対決に鳥肌がたった。少年が一人前の大人にいきなりなってしまい、まぶしいのである。

    「ゴールデン・サークル」
    麻薬密売組織ゴールデン・サークルの女ボスとの闘いがメインのストーリィ。
    麻薬に仕込んだ毒物により世界中がパニックになるが、すんでところで解毒剤を手に入れて世界を救うというお話。
    米国諜報組織ステイツマンとキングスマンの関係(バーボンやテキーラって太陽に吠えろか?)が近いのか遠いのかいまいちわからなかった。親しい仲間の死がさらっとしていて心に沁みた。

    新作が出たら必ず観るよ。

  • 吉田真悟
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    No.735
    『変な家』 雨穴著(2021/07/22 飛鳥新社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ホラー・サスペンス。
    緻密にデザインされたディテールは凄いの一言。
    本当に怖くなり鳥肌が何度も立ったが、引き寄せられて先を読みたくなる。
    中毒性がある本である。夜に一人では読まない方が良いな。おしっこ漏らしそうだから、映画は観ない(^^)/

  • 吉田真悟
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    No.736
    『変な絵』 雨穴著
    (2022/10/20 双葉社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ばらばらの不気味な話がどう合体していくのか?
    結末を知りたいのだが、恐ろしいし、不気味だし、躊躇しながら先を読んでしまう。一体誰が主人公?犯人?被害者?いびつな絵の意味が分かってくると恐怖が何倍にも膨れ上がる。
    最終章でやっと最初の絵の意味が分かり、主人公が分かって全部つながった。
    どえれー怖かった。
    夏にぴったりの本。

  • 吉田真悟
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    No.737
    『吉原手引草』 
    松井今朝子著
    (2007/3/1 幻冬舎)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/23に視聴) 
    身請けが決まった遊女・葛城が、幸福の絶頂に突然失踪する。多くの人のインタビュー(3人称多視点)でその事実が明らかになっていく。
    どうも、仇討ちが隠れているし、人情噺でもある。
    よくある形式だが、書くのは大変であろうと思う。
    いきさつを忘れてこの文章を今、書いている。はぁ。

    第137回直木賞受賞作と聞いて気になって古本屋で買った。大変面白かった。

  • 吉田真悟
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    No.738
    『夜と霧』
    ヴィクトール・E・フランクル著(2002/11/06 みすず書房)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/24に視聴) 
    極限の恐怖でも生還することが分かっていたからなんとか読めたがきつい本だ。
    人間の尊厳やプライドが粉々になったとき、人は何をしだすのか?
    人類全体の負の貴重な体験記録である。子孫に語り継がなくてはならないと思った。
    今日石で追われた人達が明日は別の民を蹂躙する。
    今、ガザで起きていることはこの本とは全く関係ないと思おう。人類の進歩はいつまで止まったままだろう。共通の敵が現れない限り、その連鎖は繰り返すのだろうなぁ。愚かなり

  • 吉田真悟
    吉田真悟
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    No.739
    『読書という荒野』
    見城徹著
    (2020/04/03 幻冬舎文庫) 

    2024/07/02 (Amazon Audibleで3/25に視聴) 
    読んだはずなのに覚えていないことだらけで愕然とする。見城先生のお祖父様は森鴎外の友人で高名な医者だったそうだ。今更知る驚愕の事実。多分忘れただけなのだが。

    いったん読むと、とんでもなく読みたい本が増えてしまう。いや、前回もピックアップしたはずだが、怠慢である。『罪と罰』、『邪宗門』から読んでみるか。

    そうすると『仮面の告白』、『豊穣の海』、『金閣寺』などはいつになったら読めるのだろうかな。細かく読書計画を立てなくてはならないなぁ。早く読めよ自分!

    読書が荒野になる日まで精進しよう