No.593 『石原慎太郎という病い』見城徹 ※月刊Hanada 2022年4月号 　石原慎太郎氏追悼特集に寄稿 2022/2/26（2/25読了） この国を誰に託すか？と聞かれたら、迷わず石原慎太郎と今でも答える。真の指導者であった。 東日本大震災直後、出鱈目な民主党政権を都知事として強烈に牽制し、悲鳴を上げていた我が故郷にも手を差し伸べて頂いた。いくら感謝してもし尽くせない。それなのに何の謂れもない築地市場の豊洲移転問題時に、あろう事か百条委員会（2017年３月）で尋問される姿に胸が締め付けられた。もう四年も前の事なのか。未だに小池百合子や音喜多なんとかの顔を見ると虫酸が走る。 石原慎太郎さんへの追悼文、しかと読ませて頂いた。いろいろな想い出が綴られ、とても感動的な文章である。亡骸にすがりつき泣かれるところはこちらも目頭が熱くなった。高校生から憧れ続けた、恩師であり親子であり親友であり、そして同じ時代を一緒に駆け抜けた同志との別離はいかばかりかの落胆か想像出来ない。 実はお二人を最初に拝見したのは、2002年1月に放送されたTOKYO MX の『東京の窓から』という対談番組である。まだ見城先生と755で出逢う遥か前であり、いまだにその映像が頭から離れない。石原さんが先生に向ける、慈愛に満ちた茶目っ気たっぷりの視線、それは親戚の危なっかしい甥っ子に向けるのと同じ、期待や不安の入り混じった二人にしかわからない関係性が滲み出たものだった。当時、見城先生はNHK『課外授業ようこそ先輩（感動を編集する）』に出演した後で、その好評を博した番組の労いから会話はスタートしたはずである。この番組と本の存在もまた、後年755で知ることになる。 そうしたお二人の関係をこの7年間、逐次間近に拝見してきたのである。それだけでも幸せであった。小説家が政治家に何故に？共同体をリペアするために個体の掟でクラッシュし続けた？『太陽の季節』の冒頭の３行を紐解く先生の解説がとても分かりやすい。そして石原慎太郎と三島由紀夫の比較論である。文学、政治、死生観の差が際立っていて、先生にしか書けない文章だなと思った。堪らなく嬉しいしそして切ない。 文学は盲に等しいので、先生に解説をねだりながら、石原文学の深淵な世界に触れていこうと思う。 雛祭り　侍、武士道　自己犠牲