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豊永阿紀(HKT48)
圓山甫
圓山甫
「踵を返す」これじゃあ物語は描けないだろうなぁ😜

23.どうしても、やりたいことがあった。言いたいことがあった。 扉の、その向こうにいる相手に言いたかった。ノックすれば始まるのに、わたしはその前で、右手の甲を向けたまま立ち尽くす。入って、なんて言えばいいんだろう。説得できるだけの力があるのか。伝えられるのか。めげてしまわないのか。それが怖かった。しばらく経って、右手を下ろす。扉から、離れた。 何回繰り返しただろう。あの時の右手は時に、発信ボタン、送信ボタン、仕事場のインターホン、食卓での、ねえ、の一言、に変わったけれど、わたしは何も変わらなかった。想像の向こうへ行けなかった。諦めて、元来た道を戻るのだ。 でも、ある時、どうしても、今まで以上にどうしてもやりたいことができた。初めてではないのに、初めての気持ちでインターホンを押す。玄関で靴を脱ぐ。揃える。もう、返す踵はない。沈黙。そして決心する。 「オーデションを受けたいです。」 時が流れ2年。 2年前の今日、わたしは最終審査に受かった。 あの時、また元来た道を辿っていたら、この文字たちも生まれていなかった。人生は間違いなく繋がっている。全てがわたしに還元する。それが、生きるということらしい。

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