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吉田真悟
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No.484 映画『みをつくし料理帖』 監督: 角川春樹 脚本: 江良 至、松井香奈 原作: 髙田 郁「みをつくし料理帖」 (ハルキ文庫) 出演者: 松本穂香(澪〕、奈緒(野江、あさひ太夫)、若村麻由美(芳)、浅野温子(おりょう)、窪塚洋介(小松原)、小関裕太(永田源斉)、永島敏行(伝右衛門)、藤井隆(清右衛門)、野村宏伸(清八)、渡辺典子(お満)、衛藤美彩(菊乃)、鹿賀丈史(采女宗馬)、薬師丸ひろ子(お百・清右衛門の妻)、石坂浩二(種市)、中村獅童(又次)、反町隆史(水原東西) 音楽: 松任谷正隆 上映時間:145分 公開:2020年10月16日 2020/10/18(10/16観映) 高田郁原作の傑作人情時代劇の世界を限定的ではあるが見事に映像化してくれていた。料理や吉原の大見世など時代考証などがさぞ大変だったろうと想像する。映画『ラストレシピ』の時も思ったが季節感のある原作の料理を実際に沢山作ってみて、もしかしたら味まで再現したのに、ごく一部だけが映像化されたのだろう。目で楽しめて妄想でも楽しめたが。 ※エンドロール中に沢山の料理が映ったが、よく見えなかった 過酷な生い立ちの澪と野江の友情を軸に天満一兆庵の再興を目指し料理に励み料理番付に載った澪とつる家であったが恨みや嫉妬から付け火され店を焼失してしまった。そこで援助するのがあさひ太夫で、澪と小松原の関係も悶々として……大半は原作通りである。又次とあさひ太夫の関係は映画で初めて知りました。 役者の良し悪しは私には分かりません。主役の松本穂香は若く元気があってこれからの女優と思う。少し竹内結子に似ていてドキッとさせられた。石坂浩二、中村獅童、若村麻由美の三人はとても素敵で自然と演技に魅入ってしまった。安心して見ていられる。逆に藤井隆、浅野温子の演技には違和感を覚え原作や私の勝手なイメージと違うなぁと思いました。少し残念。 三人娘のうち二人(薬師丸と松本)や主役級の役者はほぼ角川映画に出演している人達で、角川春樹氏最後の監督作品に駆け付けたのだろうか?いやいや原作の半分以上が残っているし、続編が出来る可能性は高いと思うな。角川映画で産湯をつかった身としてはいつかこの続編を観たい。 【気になった料理】 牡蠣鍋味噌仕立て、心太、とろとろ茶碗蒸し、こぼれ梅(味醂の搾かす)、牡蠣宝舟、鼈甲珠、唐汁

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  • 吉田真悟
    吉田真悟
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    No.715
    映画『月』

    監督・脚本:石井裕也
    企画・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
    撮影:鎌苅洋一
    音楽:岩代太郎
    制作・配給:スターサンズ、伊達百合、竹内力

    原作:辺見庸『月』(角川文庫刊)

    <出演>
    宮沢りえ (堂島洋子)
磯村勇斗 (さとくん)
    長井恵里 (さとくんの恋人)
    二階堂ふみ (坪内陽子)
オダギリジョー(堂島昌平)
大塚ヒロタ 、笠原秀幸 、板谷由夏 、モロ師岡 、鶴見辰吾 、原日出子 、高畑淳子

    2023/12/17(12/15観映)
    ※最初に謝っておきます。ネタバレや書いちゃいけないことを書きます。読んで不愉快になる方もいるかと思います。ごめんなさい。

    一昨日、大森で大問題作、映画[月]を席数70のこじんまりとした映画館で観た。20人弱入っていた客は全てシニア層で観終わった後は誰一人として口を開かず、下を向いて退出していた。皆が苦しみ悶え始めたのが分かった。
    それから丸二日も経つのに私はまだ引き摺っている。犯され続けている。

    「お前は死刑囚、植松聖(さとし)の考えや行動を全否定できるのか?」と喉元にナイフを突きつけられている。

    戦後最悪の障害致死事件「相模原障害者施設殺傷事件」(通称:やまゆり園事件)の犯人植松聖(磯村勇斗演じる、さとくん)の言動・行動の豹変に寄り添ってしまう自分がいて驚く。心の無い障害者は生きる価値は無いとして19人を殺し、26人に重軽傷を負わせ、現在は東京拘置所で死刑執行を待つ身の彼にである。聾唖の恋人がいて、心を通わせることが出来なかった皮肉や偶然を見ながら切なくなってしまった。彼もまた重篤な障害者なのである。

    映画は冒頭からサスペンス仕立てで、暗い救われないシーンや目を背けたくなる障害者の衝撃の映像が挟まれ、製作陣の並々ならぬ決意を感じた。特に磯村勇斗と宮沢りえ、二階堂ふみの覚悟と狂気の演技に圧倒された。ひとつ間違えば、非難され公開も危ぶまれただろうに。

    ラストは件の殺戮のシーンで終えるのだろうと、たかを括っていたが、その想像を遥かに超えて、音の表現で恐怖に固まってしまった。殺される側では無くて殺す方に憑依していた。

    しかしながら人を虫けらのように何百人も殺そうとする理由が見つからない。その狂気を生んだものは一体何だろうか?
    生い立ち、社会、施設の同僚、虐待、暴行、恋人、大麻……。答えは死刑を待つ彼にも分かっていないのではないか?ごく普通の障害者に寄り添っていた青年が世間のために生きる価値の無い障害者はいらないと豹変する。第二、第三の彼が自分も含めた予備軍がまだ隠れている怖さがある。

    一体、健常者と障害者を分ける線引きはどこだ?
    人間らしい生き方、死に方とは?
    そういう重たいテーマをたくさん含む、観る方も自分の存在意義や生き方が問われる辛い映画である。

    たったひとつ、宮沢りえ演じる堂島洋子夫妻の新しい命を迎え入れる覚悟が出来て、それぞれの存在を言葉で確認するシーンには素直に泣けた。生まれくる命と酷く消された命が相殺された後に少しだけ気持ちが楽になって安堵してしまうのである。

    二度と観たくはないが、一生忘れることは出来ないだろう。やはり自分はずるい人間で業の塊だ。目を背けて生きてきたし、これからも無関心に見ないで生きるのだろう。知ってしまったさとくんの一生だけは見届けることになるだろうけれど……。やはり彼を全否定出来ない自分がいる。彼の中に自分がいる。そして哀れな醜い障害者の中にも自分がいる。鏡のような存在の月に追いかけられて笑われている様だ。いつまでこの不安定な気持ちが続くのかも分からない。

    最後にこの映画を世に出した製作陣、賞を与えた報知映画賞の審査員達、紹介頂いた見城先生にお礼を申し上げたい。でも辛いっす。

  • 吉田真悟
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    No.716
    映画『春に散る』
    監督:瀬々敬久
    脚本:瀬々敬久、星航
    原作:沢木耕太郎
    製作:鷲見貴彦、園田憲、依田巽、益田祐美子、河内真人
    配給:ギャガ
    公開:2023年8月25日
    上映時間:133分

    <出演>
    佐藤浩市(広岡仁一)
    横浜流星(黒木翔吾)
    橋本環奈(広岡佳菜子)
    坂東龍汰(大塚俊)
    片岡鶴太郎(佐瀬健三)
    哀川翔(藤原次郎)
    窪田正孝(中西利男)
    山口智子(真田令子)
    坂井真紀(黒木和美)
    小澤征悦(巽会長)

    2023/12/22(12/20観映)
    沢木さんの本は結構読んできたつもりだ。
    『深夜特急』や藤圭子を書いた『流れ星ひとつ』、檀一雄を書いた『壇』、自身の父を書いた『悪名』、浅沼稲次郎と山口二矢(おとや)を書いた『テロルの決算』などだが、やはりボクサーのルポルタージュが好きだという結論に至る。カシアス内藤を書いた『一瞬の夏』、『王の闇』の中には大場政夫、輪島功一、ジョー・フレージャーなどが登場する。
    一味違う切り口でとても心に残るのである。間に合わなかったが、原作『春に散る』もいつか読んでみたい。
    この映画はその沢木流ボクシング賛歌を映画化したものだった。

    佐藤浩市演ずる広岡仁一に弟子入りする横浜流星演じる黒木翔吾は実の親子の様なのに何かと嚙み合わない。似たもの同士なのに。その後、翔吾の勢いに押されてそれぞれが問題を抱えながら皆で頂点を目指す。

    横浜流星が役作りの一環でプロテストに合格していたのは知っていたが、窪田正孝も素晴らしい身体を作り上げていたことにびっくりした。その二人の世界タイトルマッチが映画の見せ場であり、殴り合うというかどつきあう。
    そんな、日本映画史上まれにみる、凄い対決シーンの中で、あしたのジョーを彷彿させる、クロスカウンターが決まるシーンには鳥肌が立った。どっちが勝つのか、最後まで分からない。そして驚きの結果が……。

    随所に見事な桜が現れて儚い人の一生を演出していた。ある者は才能を買われリングに上がり敗れ去る。ある者は勝ち名乗りを受けながら目の障害のためリングを降りる。ある者は満足し切って満開の桜の樹を見上げながら生を全うする。
    ほろ苦く儚いボクサーの一生だが、自分のリングを見つけて、全人生を賭けて戦うボクサーに敗者はいないと思う。いるのは観客として傍観者として戦うことを避けてきた弱い自分だけだ。

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    No.717
    『村上龍映画小説集』
    村上龍著
    (1995/6/30 講談社)

    2023/12/25(12/21読了)
    映画の話は全体の1割もなく、ヨウコ、キミコ等など深く付き合った女性とのエピソードが大半を占めていた。
    『69』や『ユーチューバー』と同じく、村上龍さんの私小説的な物語であった。
    『69』ではヤザキケン、『ユーチューバー』と『悪魔のパス 天使のゴール』では矢崎健介、本作の主人公名はヤザキワタルであった。ヤザキがキーワードなんだな。

    美術専門学校に通いながら、大麻やヘロインなどを常習していたディープすぎる話が続き『限りなく透明に近いブルー』へつながる世界観である。ヤザキの行動が一人称で語られるのだが変人すぎるものの、龍さんの顔がチラついて憎めないのである。でも私は『69』の方が思いっきり笑えて好きだな。

  • 吉田真悟
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    No.718
    『アイデアを盗む技術』
    山名宏和著
    (2010/3/1 幻冬舎新書)

    2024/01/09 (01/07読了)
    知らない放送作家の著者の言葉なので自分とはあまり合致し無かった。
    ただ、いいことだけではないが自分の視点で気になったことをおもしろいこと(心に引っかかったこと)として記録し続けることは大事だと思う。ものの見方の問題なのだが。ざわついたら記録しよう。

  • 吉田真悟
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    No.719
    『外科医、島へ 
     泣くな研修医⑥』
     中山祐次郎著
    (2024/01/15 幻冬舎文庫)

    2024/01/14
    雨ちゃん(薮さん)、お疲れ様。たったひと夏の泡沫(うたかた)の恋、とても面白かったですぅ。
    ※この頃、西桜寺凛子が最強だと思える

    「な、なんと……」シリーズも6作目。雨野隆治(31歳)も医師になってもうすぐ7年になる。外科医としてのキャリアを順調に積んでいる矢先に半年間だけの離島の医師(代打)に応募してしまうという展開に……。(焦らされるのは苦手では無いが、いい加減佐藤玲医師のエピソードが欲しいな😅)

    神仙島(架空の島で、モデルは御蔵島と思われる)の診療所は瀬戸山所長と隆治の医師二人体制、手術設備も無く、外科医の腕の見せ所も無いのに……。無知で無力の研修医時代に逆戻りかと思っていたら、有能な看護師、半田志真に出会い、助けられ、外科医としてのスペシャリストに加えて総合的ジェネラリストとしての資質を自覚した様だ。またパワーアップしたな、おめでとう。

    あっという間の半年間だったけれど、盛りだくさんの出来事に恋愛やミステリー要素が加わり、決して飽きなかった。豊かな自然と僻地医療の限界の対比など、またいろいろと考えさせられましたな。

    東京でなら救えるはずの若い作業員を死なせてしまった時の隆治と瀬戸山のひりつく対立が切なくて胸が痛かった。どちらも間違いじゃない。その答えはその後の腹膜炎の患者に緊急手術に隆治が押し切って一旦結果を出すことに。

    一番心拍数が上がったところがここだった。佐藤医師に電話で相談して「やりなよ、雨野」と予想通りの男前の答えをもらったところ。

    一番突っ込んだところは、
    「さようなら、志真さん。舌の上で転がした台詞を、言わずにそのまま隆治は飲み込んだ。」←ダメだこりゃ。張り倒したくなった。
    😅てか、押し倒せや

    半田志真さんと凛子の今後が気になりつつ、東京に戻った隆治の活躍?に期待したい。

    あと4作で映画化決定だそうだ、いつまでも待ちますぜ、薮さん

    【登場人物】
    半田志真:神仙島診療所の看護師。170cmのショートカット。腎臓疾患で透析治療中。父(重造)は村の葬儀担当。

    瀬戸山:診療所所長(外科医10年、島医療に32年従事)

    繁田秀子:診療所看護師。バツイチ、一人息子(3歳)あり。

    山井嵐(ヤマアラシ):何かとイラつかせる警官

    市村於菟(おと):島の観光客。恋人は古田かなえ。
     
    【蛇足】
    謎の店、アンジェリーナ刈内商店の弁当は食わない方が良さそうだな。

    #外科医、島へ
    #泣くな研修医
    #中山祐次郎
    #幻冬舎文庫

  • 吉田真悟
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    No.720
    『地球の中心で何が起こっているのか』
    巽好幸著
    (2011/07/30 幻冬舎新書)

    2024/01/15 (01/13読了)
    何年地球科学とか地質とか
    岩石を学んだのだろう?
    全く的外れのアプローチであった。マントルとマグマの違いも理解出来てなかった。勉強をやり直そう。

    【以下、自分用メモ】
    ・マントル=カンラン(橄欖)岩を主体とするが年に数センチは動して対流する
    ・マグマ=マントルが溶けてできる熱いドロドロの流体で二酸化ケイ素が最も少ないものが玄武岩質マグマ(45-52%)、続いて安山岩質マグマ(52-63%)、デイサイト質マグマ(63-70%)、最も多いのが流紋岩質マグマ(70-77%)である。マグマが冷却固化すると火成岩になるが、固化する際にはもともとマグマに数%含まれていた揮発性成分が抜けてしまっている。 地下で高温高圧のまま存在しているものをマグマと呼び、火山噴火等でマグマが地表に流出すると溶岩と呼ばれるが、明確な線引きは無いため呼称は混在することがある。
    ・海洋底地殻=玄武岩(古いものほど冷えて重くなり大陸の地殻の下に沈み込む)
    ・大陸地殻=安山岩(海洋底プレートの沈み込み時に変化し形成される?)
    ・密度:玄武岩>マントル>安山岩 ※二酸化ケイ素の含有が多いと軽い。大陸はマントルの上に浮いている状態。→アイソスタシー
    ・海嶺:マントルが溶けて、海洋底地殻の成分に変化し供給を続けるところ
    ・火山弧:110km、170kmの2列(東北日本の火山帯等)を形成する。

  • 吉田真悟
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    No.721
    『凡人のためのあっぱれな最期』樋口裕一著
    (2024/01/31幻冬舎新書)

    2024/02/26(2/22読了)
    著者の妻(61歳)が子宮体癌で亡くなったときの状況を克明に記述した本である。
    辛い治療や闘病の際の家族の狼狽をよそに、あわてず騒がず、泣き言も言わなかったあっぱれな最後だったそうだ。
    そういうと聖人然と聞こえるが、淡々と身の丈にあった考えや生き方で、菫のようにひっそりと生きそして亡くなったそうだ。
    そんな生き方(死に方)に興味が涌いたので読んでみた。
    当然、この方の奥様とは面識がないが、著者がまとめたいろいろな死生観は今後の自分の生き方(死に方)の考察におおいに役立つと思う。
    菫のようなつつましい奥様とは対照的な生き方として石原慎太郎さんの本(★)からその太陽の様な派手な生き方を引用していた。
    ★石原慎太郎著『「私」という男の生涯』より

    また、三島由紀夫著『豊饒の海』を死生観のまとめの章の輪廻転生の例として引用していた。とても惹かれる二人の小説家の作品が取り上げられていて、それだけでうれしくなった。
    死とは最後の未知であり、恐怖や苦しみや痛みを伴う逃れられないものと捉えてきたが、もしかしたら希望や喜びもあるのかもしれないと思い直した。微笑みながら死にたいが、自分の様な卑小な人間の最後は見苦しくドタバタするのだろうねぇ。

  • 吉田真悟
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    No.722
    『板上に咲くMUNAKATA: Beyond Van Gogh』
    原田マハ著
    (2024/03/06幻冬舎)

    2024/03/06 Amazon Audibleで聴読
    ※ネタバレあり😅

    棟方志功の実像が妻:チヤ(千哉子)さんの目線で語られていた。
    志功の版画に消費された大量の墨は全て、チヤさんが夜中に墨を磨って用意していたそうだ。

    志功は偉大な芸術家というより情熱的職人というイメージだった。人懐っこくて、ひょうきん。偉ぶるところは皆無だが、版画に没入すると周りが全く見えなくなる。
    浮世絵に影響を受けたゴッホら後期印象派の画家達からさらに影響を受けて、版画を芸術として極め、世界のムナカタとしてその名を轟かした大好きな東北人である。

    誰でもそうだろう、貧乏のどん底にあった志功一家が、美術評論家の柳宗悦らに見いだされるところが一番感動し泣けた。
    ※1936年の国画会出品作の「大和し美し版画巻」(やまとしうるわし)が柳らに250円の高値で初めて売れたのだ。
    そして戦火を逃れた「二菩薩釈迦十大弟子」の裏話を読んで、是非とも現物を見てみたいと思った。

    私は志功の作品の全てに母性を感じて心が丸くなってしまう。ゴッホの荒々しさ無念さと違った幸福を感じてしまう。

    原田さんの本にはゴッホの作品が良く登場する。
    本作にはゴッホの7点のひまわりのうち2番目に描かれ、山本顧彌太が所蔵した「芦屋のひまわり」が登場し、志功がこの絵を見に行く直前に次女が病気のため帰京した経緯が描かれていた。残念ながらこの作品は空襲で消失してしまうのだ。
    もう一枚は5番目に描かれ、安田火災海上(現損害保険ジャパン)がバブル当時に約58億円で落札・購入したもの。序章と終章で妻:千哉子さんがインタビュアーから感想を求められるシーンがある。

    その他、小説『リボルバー』(幻冬舎)には4番目に描かれ、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する15本のひまわりが登場する。幸運にも私は実物を上野で観る事が叶い鳥肌が立ったのを思い出す。

    ゴッホと日本人画商・林忠正との出会いや弟テオ、友であり後に決別するゴーギャンとの関係などが良く解る『たゆたえども沈まず』(幻冬舎)はゴッホ好きなら是非読んで欲しい。

    でも今はこの本にも登場した藤田嗣治(つぐはる)の話を原田さんの視点で読みたいなぁと思っている。なぜ、戦争に加担するような絵を描き、日本を捨てたのか……

  • 吉田真悟
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    No.723
    『八月の御所グラウンド』
    万城目学著
    (2023/08/03 文藝春秋)

    2024/03/07 Amazon Audibleで視聴
    ※ネタバレあり😅

    第170回直木賞作品である。
    いつもの万城目さんの奇想天外なものでは無くて、割と常識的な話しであった。キーワードは「京都」と「ファンタジー」か?

    事情があって草野球大会に駆り出された主人公たちと、伝説の投手:沢村栄治らが登場するといった野球ファンタジーであった。
    野球の歴史や面白さ、戦争の悲惨さ理不尽さなどを感じるが、総じて野球が好きになる。

    個性的なキャラとしては勝気な中国人女性が気になったが、勝手なことを言うと、万城目ワールドの住人としてはインパクトが弱いと感じるし『鹿男あをによし』や『ヒトコブラクダ層ぜっと』などに比べると全体的にパワー不足と思ってしまう。

    溜まっている未読の本をそろそろ読まねば。