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ねこバス
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貫井徳郎「乱反射」 飛鳥さんがオススメしていたので読んだ。 普段、僕は映画もドラマもアニメも一気に見切るタイプの人間で、それは本についても例外ではなかったと自覚していたが、この本は読了までに3日かかった。なぜなら、序盤はなんの繋がりも無い一般人の日常生活が描かれていて、冗談抜きで本当に面白くなかったからだ(とはいえ、皮肉や嫌味など、文字通りではない意味を含んだ言葉の表現には目を見張るものがあった)。でも、それらの何の変哲もない日常のひとコマである点ひとつひとつが、中盤から最後にかけて全て結ばれていくような展開は素晴らしかった。これがトリックとかが仕掛けられた純粋なミステリーだったら、読んでいて自分でトリックが分かるのは欠陥なんだろうけど、これはあえてそうしているんだろうし、その構図さえ素晴らしい。 普通、ミステリー小説というのは謎が解けたり犯人が分かったりしてスッキリして終わるものが多いけれど、これは違う。爽快感など微塵もない。また、この物語はもちろんフィクションなのだが、リアリティーがありすぎて、どうも他人事とは思えない。フィクションだからなんでもありみたいな世界観の物語も嫌いでは無いけれど、これは誰にでも起こり得るように感じるリアリティーがあるからこそ深く考えさせられたので、フィクションにこそリアリティーが必要なのかもしれないと考えるようになった。 そして何より、飛鳥さんがこの本を16歳で読んでいたという事実に驚いた。これは人間の醜いところが凝縮されたような小説なので、正直、不快感さえ感じるし、これを読むと日々の生活から気を遣うようになる。また、人間は人と人との関わり合いで生きていることもまざまざと実感させられる。深読みかもしれないが、この本を読んだ経験が、自分にも他人にも期待しないという考え方を生んだのかもしれないと、ほんの少し思った。 読まなきゃ損。

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