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鈴江信彦
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[新宿スワン]第5巻 和久井 健 著 講談社 渋谷AV編の序章・第5巻は渋谷AV編の序章です。 真虎がタツヒコと犬飼をバーストのAV進出特攻隊として指名することから歯車は動き始めます。 この渋谷AV編という本筋とは別に第5巻では真虎の深慮遠謀、権謀術数の数々が読者に明らかになる仕組みになっていて、真虎の底知れぬ魅力を再認識出来ました。 真虎は1千万円の返済を要求されている部下の犬飼を連れて本丸のホストクラブに乗り込みます。 そこでホストクラブ経営者の信也がホストたちに『こいつらやっちまえ』と言った瞬間、『いいのか信也?スジ通すために話をしにきたオレをボコる… 上に立つ者として短気は良くないよ。この店の前の経営者は話のできる人だったなぁ。終わったね、この店』と言い放ちます。 部下のホストたちの面前で上に立つ者の器量を問われた信也が矛を収める言葉を発した途端に『すまないと思っているよ』と信也を立ててやり半額の5百万円を3カ月以内に返済するという妥結案を提案する真虎。 そのやり取りを目の前で見せられ真虎に心酔しきった犬飼に対して『死ぬ気で働けば返済できる。オマエはAV専属スカウトマンになれ』と伝えます。 借金を半額にしてもらった真虎に感謝している犬飼が真虎の”お前はAV専属スカウトマンになれ”という提案を断る理由も無く、むしろ借金返済のために働くモチベーションまで与えられています。 全てが真虎が書いた絵の通りに動いているところが、とても痛快です。 バースト社長から『オレはAVをオマエに任せてんだよ。オマエの部下じゃねえ!オマエが行けや!』と言われた真虎が放った言葉も痺れます。真虎は社長に対して『今、必要なのは情報です!渋谷のスカウトの力関係・縄張りetc…知るためにはまず、もめる。そのためのタツヒコと犬飼です』と伝え、社長は真虎の深い読みに感服します。 全てが真虎の描いたとおりに事が進んでいるように思えます。 それ故に真虎の言動の謎…”どうしてこの人物とこのタイミングで会い、このようなことを話しているのか?”も、第5巻ではまだ明らかになっていない大きな思惑に向かっての真虎の仕掛けであることは容易に想像出来、僕はもう【新宿スワン】の世界から抜けられない状況となりました。

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