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サイバーエージェント社長 藤田晋の リーチ・ツモ・ドラ1 連載 第15回 【夏休みの過ごし方】  幻冬舎の見城徹社長との共著で、2011年に「憂鬱でなければ、仕事じゃない」、2013年に「絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ」、この2冊を出版した。これらの本は、見城さんが言葉を選び、それについての見城さんと私の往復書簡のような形で構成されている。  本としてもなかなか売れたんだけど、私にとっては、30代でこの共著を制作したこと自体が、後の仕事人生に大きな影響を与えた。ともすればデジタルで合理主義に偏りがちなIT産業に身を置きながら、見城さんの言葉から、人としての信用、義理、人情、恩返しなど、人間関係に関わる重要な部分を学んだ。  また、見城さんが忌み嫌う、「表面的な人」との関わり方、「凡庸なもの」が如何に無価値かを学んだことは、後にメディア業、コンテンツ業を開拓していく自分の仕事のスタイルに、多大な影響を与えた。  私は、「ネット業界で最も芸能界に食い込んだ男」と評されたことがある。そもそも時代背景として、ネット業界はアクセスを集められるコンテンツとして芸能を必要としていたし、芸能界はメディアの変化に対応するためにネット業界と組む必要があって、いわば相思相愛だった。  しかし、人の人生を扱う芸能界は、得体の知れない新しい人たちに荒らされるのを恐れていた節があった。多くの人の才能や夢や思いで成り立つ世界を、身勝手なビジネス合理性だけで掻き乱されるのは嫌だったのだろう。そんな中にあって、見城さんから多くのことを学んでいた私の言葉や行動には、安心感があったのではないかと思う。本の中には数々の金言が詰まっている。 [「パーティーには出るな」] 「小さなことにくよくよしろよ」。これは小さな約束を守らない人に、大きな仕事は怖くて任せられないという意味だ。私もこの本を書いてから、なおさら小さな口約束をメモしてto doリストに入れ、必ず実践するようにしている。これは、信頼を積み重ねる上で本当に大事なことだと感じている。 「パーティーには出るな」。見城さんは「パーティーは表面的な集まり」だという。落ち着かない場で、大切な相手と会ってもちゃんと話すことが出来ず、言葉足らずで後から後悔すると。それを聞いて私も、もともと好きではなかったパーティーに、なおさら行くのをやめた。これは断る決心がついたという意味でもよかった。  本に書いたことで、その後、困ったこともある。「行く気がないのに、今度、飯でもと誘うな」。この言葉の趣旨は、「今度飯でも」と言ったのに、いつまで経っても連絡してこない人がいる。相手に期待させておいて、自分が言ったことを軽い気持ちで反故にするやつは信用できない、ということだ。見城さんは、行くと言ったら手帳にメモして、どんなに遅くなっても約束は守ると書いている。まったくその通りだな、そう思って、私も同調した。  しかし、ビジネスの付き合いの中で、「今度飯でも」は頻出する。そしてその意味合いは、軽く相手に好意を伝えたいだけの時もある。〝しばらく会ってないけど、いつも感謝してるよ〟〝一緒にご飯行きたいくらい大事に思ってるよ〟。そんな風に会話の最後を締める程度に、「今度また飯でも」、そう言ってくる人はとても多い。  これを目の前で言われた時に、「いえ、行きません」とは、とても

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