12月14日(金)
天気が良かったので洗濯物を干す。
僕は天気が良いと洗濯物を干すのだ。
ベランダで機嫌良く干していると、Tシャツが1枚飛んでいってしまった。
ヒラヒラヒラヒラと飛んでいく。
これはまずい。
このTシャツは僕の自作のTシャツで、何かログインする時とかに必要なパスワードが全て書いてある。
これが無くなると久々にログインするものにログインできない。
家を出てヒラヒラヒラヒラと飛んでいくTシャツを追う。かつおぶしを薄く伸ばした生地にしてしまったことを恨む。こんなに飛ぶとは。
しばらく走って追っかけていると、道に紙が落ちてるのを見つけた。「2346」と書かれていた。
僕とはまた別の人がパスワードをなくしている。
このパスワード社会、パスワードの管理には本当に悩まされる。
再び追いかけているとTシャツは雑居ビルの屋上に着地した。
6階建てくらいだろうか。
ビルの外に付いている錆び付いた階段を登る。
カンカンカンと登っていると
俺は何をしているんだと思った。
俺はこんなことをするために大阪に出てきたんじゃない。
ビルの外に付いている階段をカンカン登るための人生なんてまっぴらだ。
でもそんなことを思っていても仕方がないので登りきった。
屋上前までには到着したが、屋上への扉は鍵がついていた。パスワードを入力するタイプの電子錠だ。
僕はもしや…と思い
「2346」と入力した。
開かない。
どうしようと思っているとカンカンカンと音がしてきた。
まずい。下から誰か登ってきた。
怖い。
怒られる。
おじさんが登ってきた。
僕は思わず「すいません」と言ったが、おじさんは僕を見るなり「4511」と言ってカンカンカンと再び降りていった。
てっきり怒られると思っていたので安心した。
僕は「4511」と入力した。
開かなかった。
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