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『小説家の休暇』には、三島由紀夫が思索した論考が10編入っています。 三島の評論や随筆は数多く残されていますが、これはほんの一部。 しかし一般の「休暇」と違い、あまりに広範囲に及ぶ思索に、正直ついて行けない部分も多々あります。 文学、美術、演劇、政治、心理、世相、死など。 すごいと思う反面、三島の凝り固まった考え(たまに感じることなので)や、面倒で杓子定規的な性格は非常に苦手ですが、縦横無尽な知識や思考、学ぶ姿勢や努力や彼の作品には敬意しかなく、また学ぶところも多く、私は三島作品も読むのです。 まぁこの本を段ボールから取り出したのは太宰批判を読んでみたかったからであり、本書『六月三十日(木)』の痛烈な批判自体、そのまま平岡公威批判にも感じる。  強い文体は弱い文体より美しい  弱いライオンが強いライオンより美しくは見えない  強固な意思は優柔不断よりよく、征服者は道化より… はいはい、わかったわかった。 幼い頃からの虚弱体質を克服する為に、ボディビルやボクシング、剣道などで鍛錬し、その見事な肉体美を克己心の象徴としていた三島にはそう思えるのでしょう。 でもねぇ、本書中盤あたりに出てくる「葉隠」の感想と照らしてみると、三島タイプの「並々ならぬ努力し結果を出したからこその強い人間」より、太宰タイプの「弱い人間」のほうが世の中には断然多いと分かっているのです。 私も「弱い人間」ですから、単に強さを強調する様な作品ではない事は分かります。 だから私も三島作品を読んで来たのだと思う。 他には、文章と文体の違いや、日本文学小史などのわかりやすい解説など、一般人にしてみれば「休暇」というには全く休んでいない随筆が多数掲載されています。 面白いですよ。 余談ですが、ノーベル賞受賞者のアルノーの「影響を受けた作家」の中に太宰治の名があった事には、正直驚きました。 いやいや、三島由紀夫でしょ!と思うのですが、倫理をひっくり返した太宰文学を更にひっくり返したら、三島由紀夫っぽくなったってことなのかな。 いずれにせよ、太宰、三島どちらも好きな作家である事に変わりはありません。

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    半年振りの大阪。
    今回は出張でした。
    前乗りだったので、取引先の担当二人と予約していた和食屋へ。
    予想以上に外国人でごった返していたが、個室を用事してもらっていたので安心して食事が出来るのはありがたかった。

    麦焼酎で乾杯し、名物バッテラや鰆のタタキ、フグの唐揚げなどを頂く。
    仕事と家庭の話は一切しないというルールを設定し、映画[オッペンハイマー]、ヨーロッパ企画やタモリ倶楽部、市川紗椰のスムージーの本などを肴に楽しいひと時を過ごせた。

    『遠交近攻』
    この言葉は、遠国とは交わり、近国は攻めるという軍事戦略を表す『史記』に出てくる言葉です。
    人間関係に置き換えるなら、毎日顔を合わす人とはトラブルが起きやすいと解釈すると、嫌でも自尊心のぶつかり合いは避けられないという風にも捉えられる。

    「プライドが年々減っていくんですよ。友人が増えたのはそのせいかなぁ」
    「自分に見合った美意識ならいいけれど、他人の基準で語るのって恥ずかしいよね」

    この二人、相変わらず面白い。
    遠交近攻というより、(老眼ではないが)「遠近両用」と言った方がしっくりくる。

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    映画の食事シーンは、登場人物の個性を解りやすく表現する重要な要素です。
    『タクシー・ドライバー』でアイリスが食べるグラニュー糖をまぶしたジャムトーストや、『マンハッタン』のベッドで食べるテイクアウトの中華などは、見た目とは違い、その人物の精神的未熟さを表現していました。

    アイリスとトラヴィス、40歳の放送作家と17歳の高校生カップル。
    今では設定すらアウトです。

    そんなモラル的な事より、『マンハッタン』です。
    映画を通して見てきたニューヨークにずっと憧れていた子供時代でしたが、この作品は、物語や街の雰囲気より箱の中身が気になって仕方なかったなぁ。
    あの箱の中には何が入っているんだろう。
    焼きそばっぽいけれど、凄く美味しそう。と思った記憶がある。

    今ではアマゾンでも箱だけ買えるけれど、輪ゴム付きラップを被せた中華の出前ではなく、持ち帰り専用中華は当時の僕には斬新でした。

    他には『サイドウェイ』の主人公の行動も印象深い。
    ワイン通のマイルスが別れた妻が再婚すると知って、大切に寝かせていた超高級ワインを大衆食堂に隠し持って行きガブ飲みするシーンです。
    ネットで調べてみると、1961年のシャトー・シュヴァルブランって70万はするんですね。

    SNSに散見される様な損得勘定を含む怒りではないから、この真っ直ぐな感情爆発には、切ないけれど笑える。
    本気のやけ酒ってこうでなくっちゃ。
    こちらも、別の意味で斬新でした。

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    [燃ゆる女の肖像]
    無名の女流画家と貴族令嬢の恋愛もの。
    台詞は少ないし、女優達の表情も決して豊かではない
    しかしながら、細かな心情や内在する情熱を視線だけで表現する。
    見る側の視線、見られる側の視線、それを見守る視線
    絵画のような上品で淡い映像と、女優陣の演技対決は見応えがあります。
    [ファルコン・レイク]
    思春期特有の感情の揺れと、終始払拭出来ない死の匂いが何とも不穏な気配を醸し出しています。
    ノスタルジックな映像も相まって、最後は心地良く騙されます。
    16歳の少女と、14歳の少年が主役ですが、この年代の3歳差は大きい。
    女子はグイグイ誘惑するのに、男子はソワソワ、ドキドキからのアタフタ。
    こればかりは全世界共通なんですね。

    四月に観た映画です
    中でも時代劇は全て当たりでした。
    ・ドロステのはてで僕ら
    ・リバー、流れないでよ
    ・燃ゆる女の肖像
    ・ファルコン・レイク
    ・市子
    ・仕掛人・藤枝梅安1、2
    ・ゴジラ-1.0
    ・善き人のためのソナタ
    ・フェア・プレー
    ・ペーパー・ムーン
    ・クレイマー・クレイマー
    ・嘘八百1〜3
    ・居眠り磐音
    ・都会のアリス
    ・ヨコハマBJブルース
    ・蘇える金狼

    ・余韻の長さだと「燃ゆる女の肖像」がダントツ。
    ・劇団ヨーロッパ企画はどれも面白い。
     もっと人気が出そうだし、脚本が完全オリジナルなところも👍
    因みに、[リバー、〜]は『日本批評家映画大賞』で脚本賞を受賞しています。
    ・[ペーパー・ムーン]は、モーゼとアディと一緒に旅をしている気になる。 
    やっている事は全て犯罪だけど、微笑みながら見入ってしまう作品。
    ・[クレイマー・クレイマー]の朝食シーンのアタフタ感は最高。この時代のダスティン・ホフマンは全て素晴らしい。
    ・梅安役のトヨエツはハマってたし、色気が半端なかった。
    ・優作主演の二作品は何度も観たけれど、『蘇える〜』は、前屈みに走る優作、吹雪ジュンの可愛らしさ、佐藤慶と顔色の悪さが脳裏から離れない。
    BJは・・・ライブシーンを観るため作品。かな。

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    「キリマンが2、モカが1、ブルーマウンテンが5だ」
    「5か?」
    「4だ」
    「4か?」
    「3だ」
    「3だな?2度と間違えるなよ!」

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    パティ・スミスが自身の仕事机を写したものをインスタにアップされていて、そこに芥川龍之介のポートレートが飾られていました。
    芥川の作品は現在世界40の国で翻訳されている。
    知っているのは当然としても、元祖NYパンクのデスクに、子供の頃から慣れ親しんでいる作家の写真を見つけた時は何だか嬉しかった。

    ちなみに、海外ではどの作品が受けているんだろう。

    そこで、土曜日に図書館へ行ったら、新潮社刊行モノで外国人が編集した短編集を見つけたので読みました。
    まず構成が面白い。
    四部構成だったが、日本人が編集したら選ぶであろう
    「河童」「トロッコ」「蜜柑」などが載っていない。

    その中に『馬の脚』という作品があった。
    聞いたことがなかったので読んでみたが、カフカの『変身』やゴーゴリの『外套』のようなシュールな作品でした。
    芥川ってこんな作品も書いていたのかと思い調べてみたら、岩波とちくま文庫の全集にしか見当たらない。
    海外の人には芥川の野生的な一面が見える作品だと感じられて珍しかったのだろうか。。

    ただ「蜜柑」が選ばれていないのは残念。
    他人への憎悪の感情が、一瞬にしてかき消える瞬間を「そうして刹那に一切を理解した」と表現した一文が好きなんですが、海外では違うんだろうなぁ。

    並外れた感性と知力で名作短編を数多く残したのは確かだから、海外で評価され多くの国で翻訳されているのも、当然と言えば当然なんですが。

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    [ボヘミアン・ラプソディ]の展開に似ているのは愛嬌で済ませても、新規ファンを取り込むには、余りにあっさりし過ぎていた気がします。
    遺族が製作にも名を連ねていたけれど、闇の部分の描写がないのはそのせいなんだろうな。
    だって、ライブのバックコーラスに愛人と本妻を並べてハーモニーさせたり、子供達の母親だって。。

    マーリー&ウェラーズを聴き始めたのは、中3の頃に友人から薦められたのが始まり。
    [Live!]と[Babylon by Bus]、共にライブ盤から。ゆったりしたカッテングに、鼻にかかった歌声、ティンドラムと分厚いコーラスの虜になるのに時間はかからなかった。
    特に[No Woman,No Cry]
    トレンチタウンという地名も、「泣かないで」がdon't cryではない理由も知らなかったけれど、この曲は学校から帰ると毎日聞いていた。

    ボブやトム・ウェイツは、全く売れてない頃に自身の曲をビッグネームにカバーされ、そこから火がついたミュージシャンです。
    埋もれた才能をいち早く見出したクラプトンやイーグルスの才能も凄いけれど、一連のカバー曲を聞いてもオリジナルのクオリティを超える事などないとわかる。

    ギターをかじった人と、そうでない人では、聴こえて来る音や情報が違うのは当たり前。
    色んなジャンルの音楽を知っている人も同じくだけれど、たった四つのコードで構成された曲を40年近く飽きずに聴けるって中々ない。

    この作品の良さは、楽曲を余す所なく流し続けた事に尽きるし、知らない人には申し訳ないがファンは満足したと思う。
    何より「オリジナティ」って人間力と佇まいなんだなぁと感じた作品でした。

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    昨夜は[蜜柑]と梶井基次郎の[檸檬]を読んでいました。
    いわゆるフルーツもの(笑)

    [檸檬]については、この小説の世界観が好きで、実際に西京極から丸善まで歩いた事があります。
    まぁ20年ほど昔ですが、当時の営業担当エリアが京都市だったので、半分はサボりですし若かったというのも理由です。
    でも結構遠回りで2時間、いや、もっと掛かったかなぁ。

    今は知らないけれど、当時の美術書コーナーには檸檬の文庫本が平積みしてあったり、「お客様へ ここへ檸檬を置かないで下さい」という粋な注意書きがあったりで楽しかった。

    [蜜柑]についても、地元の高校生が横須賀線のどの辺りで蜜柑が投げられたのかを、当時の地図を元に特定する調査をしていました。
    テイストは違えど此の二作品には、救いやカタルシスだけで終わらせない、恒久的純粋さがあると思います。

    しつこい様ですが、ジェイ・ルービン編の芥川短編集には[蜜柑]もなければ[河童]や[トロッコ]も載っていない。
    [河童]はベンジャミン・バトンやツァラトゥストラを内包する傑作だと思っているし、[トロッコ]はメタファーだらけの短編だけれど、三島の『午後の曳航』同様、子供が屈強な大人を見て感じる無力とか不安に共感しました。

    二つとも自分は大好きな作品です。

    しかし、(しつこい様ですが)選ばれていない。
    何でやねん。。。

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    パティ・スミスのインスタに、今度は[河童]海外版の画像がアップされていた。
    書斎のポートレートといい、彼女は芥川が大変お気に入りの様だ。
    パティ・スミスについてはAL[ホーシズ]だけは何度も聴いたけど、今度は詩を読んでみようと思う。

    本格的に梅雨入りしたようだし、インスタ画像も件もあったので、今日は図書館で芥川に関する書籍を探す事にした。

    漱石、啄木、芥川の研究者である平岡敏夫著書の『ある文学史家の戦中と戦後 戦後文学・隅田川・上州』が目に入り、目次を開いてみたら[蜜柑]の話があったので読んでみた。
    タイトルは「芥川作品をアメリカで読む」
    その中に、アメリカ東部の大学生達と[蜜柑]を読み合った内容が書かれていた。

    「暖な日の色に染まっている蜜柑が凡そ五つ六つ、汽車を見送った子供たちの上へばらばらと空から降ってきた」(原文)

    この部分のレポートを提出した学生の殆どが、驚いた事に「神のご加護」若しくは「天の恵み」と捉えている。
    僕が日本人だから、って訳ではないだろう。
    何故「空」の前に「神」や「天国の(ヘヴンリー)」が入るのだろう。

    読み進めると、著者の平岡さんは「仮にヘブンリーがなく「空」だけでも、宗教心のある敬虔なアメリカ人なら、そこに「神」を見る事になるのだろう」と記されていた。

    国によって蜜柑の受け取り方も様々なんだ。

    おあとがよろしいようで。