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戸澤恵里
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【読書日記】枯木灘/中上健次 天人五衰/三島由紀夫 2つの小説はいずれも人間の「虚無」を描いているが、その合間に、和歌山や清水の風景、いわば無限の風景が、まるで寄せては返す波のように繰り返し描かれているため、その景色を通じて、読み手はつど意識が無限大に広がり、「唯在る」感覚もまた心に残る。 豊穣の海において、三島が本多をして 「ベナレスで本多が見たものは、いわば宇宙の元素としての人間の不滅であった」 「死んで四大に還って、集合的な存在に一旦融解する」 「そこにあるのと、かしこにあるのと、全く同じことを意味する」 と言わしめているように、宇宙大(梵)の視点で輪廻転生を解釈すれば、大海の末端において波打ち際の白い水しぶきが現れては消え、現れては消え、を繰り返すように、人間は宇宙の末端を転がりながら生きていて、“唯その波が在る”ということにすぎない。 般若心経は 色即是空間髪入れずに空即是色と続く 色即是空空即是色  この双方向なる動的存在の全体こそが梵であり、2つの小説は、梵について敢えて仔細を語らずとも、その構成において色即是空空即是色の往来(人間の虚無と、宇宙の美)を繰り返すことで虚無の感と唯在の感をともに読み手に与えるのだろうと思った。  ※漢字の入力ミスがあったため再投稿

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  • 戸澤恵里
    戸澤恵里
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    【読書日記】「死という最後の未来」幻冬舎文庫

    死ねば意識がなくなる、死ねば虚無だ、という石原慎太郎さん。

    意識がなくなるかどうかなんて虚無かどうかなんて、わからないじゃないですか、と応じる曽野綾子さん。

    価値観が違う紳士淑女の軽妙なやりとり、楽しく読みました。

    私が天人五衰で感じた「色即是空空即是色」、この対話の中で、石原さんが引用されておられました。

    石原さんはこれを
    「時間と存在に対する究極のアフォリズム」
    「死んで時間が途絶えたらすべてがなくなる」と。

    しかし、
    「死んで時間が途絶えたらすべてがなくなる」
    とは釈迦のことばの半分(色即是空)ではないか、と私は思います。

    本来、色即是空空即是色、これで1セットだから、色が空になり空が色にもなる往来、双方向性こそが、釈迦の言わんとする宇宙だと私は思います。

    石原さんも実感されておられるように

    「意欲だけは衰えないのに、肉体に勢いがない」

    私も、そして多くの人もこの感じを持つと思いますけれども、これこそが、

    肉体と精神は時間軸が違う、
    つまり
    肉体と精神はその出元が違う、
    ということの証左ではないでしょうか。

    肉体は地球のもの。
    精神は宇宙のもの。
    脳はその両方につながっている。

  • 戸澤恵里
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    【読書日記】大河の一滴/五木寛之

    見城さんの755で紹介されていた五木寛之さんのコロナ禍における三散のお話。

    そのときの五木さんのお写真がとても素敵で(そっちかい!!)、素敵な人だなぁ、こんな方がいらっしゃるのだなぁ、という余韻でもってこの本を読んだ。

    私は、
    人生は喜び一色、
    人生は悲しみ一色、
    どちらにも違和感を感じているタチなので、筆者の「人生というものはおおむね苦しみの連続」という言葉に、初めは違和感を持った。

    しかし私たちの生命活動はすべてプラスとマイナスの極性によって成り立っていて、細胞の活動ひとつとっても、プラスとマイナスの間をたゆたうなかで生きている。それを念頭において考えると、なるほど、この本の指南するように、人生は絶望だという極地をスタート地点とすれば、心の向きはおのずと喜びに向かい、喜びを喜びとして認識できる、というのも道理だ、とハッとした。

    絶望に立つことで希望が見える、という、絶望がもたらす方向転換の効用に目から鱗だった。

  • 戸澤恵里
    戸澤恵里
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    【読書日記】「暗殺」柴田哲孝著

    後ろには後ろが、その後ろにはまた別の後ろがいる。

    「蒼ざめた馬を見よ」の世界
    「インテリジェンス武器なき戦争」の世界
    を彷彿とさせるストーリーでした。

    この日本で、こういう本を出版した胆力、その矜持を尊敬します。

  • 戸澤恵里
    見城徹見城徹

    氷上で震えている群の一匹でいるより、無数のリスクが待っていても思い切って海へ飛び込むファーストペンギンでいたい。

  • 戸澤恵里
    戸澤恵里

    タイミングよくInstagramの「discoverearth」というアカウントで、まさに「ファーストペンギン」の映像が投稿されていた。一匹目は本当に「他のヤツなんて関係ない。俺は飛び込むんだーッ」とばかりに、淡々と、しかし力強く飛び込む。かっこいい。その後は、押されて満更でもないと落ちる奴、落ちたくないと足掻きながら落ちる奴、明らかに前のペンギンを蹴落とす奴。物事の始まりとは、かくも万感なり。

  • 戸澤恵里
    見城徹見城徹

    12月の雨

    歌:松任谷由実
    作詞:荒井由実
    作曲:荒井由実

    雨音に気づいて 遅く起きた朝は
    まだベッドの中で 半分眠りたい
    ストーブをつけたら くもったガラス窓
    手のひらでこすると ぼんやり冬景色

    今にもあなたが 白い息をはき
    通りをわたって この部屋に来る気がして

    時はいつの日にも 親切な友達
    過ぎてゆくきのうを 物語にかえる

    もうすぐ来るクリスマス
    想い出の日には
    また会おうと云った
    もう会えないくせに

    今でもうしろを ふとふり返れば
    あなたが笑って たってるような気がして
    時はいつの日にも 親切な友達
    過ぎてゆくきのうを 物語にかえる

    時はいつの日にも 親切な友達
    時はいつの日にも 親切な友達

  • 戸澤恵里
    戸澤恵里

    松任谷由美さんの12月の雨。これ本当にすごくいい歌だ!

    メロディをそのゆっくりとしたテンポで聴いていると、

    一つひとつの情景が心に沁みる。

    ページをめくるように、情景が変わる。

    もうすぐデートなのかな、
    あ、違う、
    振られたんだ...と分かる。

    聴き終えて、悲しくはない。

    優しいメロディの余韻とともに
    レトリックの癒し(時は親切な友達)が心にそっと残るから。

    なんてすごい歌だろう。
    こんな歌があったなんて。

    Apple musicで検索したらChayさんという人がカバーしていて、私は彼女の抑揚が少し多めについた歌い方が好き。

    見城さん教えてくださってありがとう。

  • 戸澤恵里
    見城徹見城徹

    「ユーミンで好きな曲を一曲だけ選べ」と言われたら、僕は[12月の雨]と答えます。

    雨音に気づいて 遅く起きた朝は
    まだベッドの中で 半分眠りたい
    ストーブをつけたら くもったガラス窓
    手のひらでこすると ぼんやり冬景色

    今にもあなたが 白い息をはき
    通りをわたって この部屋に来る気がして

    時はいつの日にも 親切な友達
    過ぎてゆくきのうを 物語にかえる

    もうすぐ来るクリスマス
    想い出の日には
    また会おうと云った
    もう会えないくせに

    今でもうしろを ふとふり返れば
    あなたが笑って たってるような気がして
    時はいつの日にも 親切な友達
    過ぎてゆくきのうを 物語にかえる

    時はいつの日にも 親切な友達
    時はいつの日にも 親切な友達

    「時はいつの日にも親切な友達 過ぎてゆくきのうを 物語にかえる」
    この歌詞がユーミンの全てを表していると思います。ユーミンは過ぎてゆくもの、変わってゆくものが内包している切なさや甘酸っぱさに異常に敏感です。そこに人生の無常があり、物語の根源があることを本能的に知っている。それをさり気ない日常的な出来事や風景に託して歌う。それは
    「行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたかは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」から始まる鎌倉時代初期の鴨長明の[方丈記]と深く通底している。つまり、ユーミンは現代的な衣装を凝らしながら「人が生きる営みの本質」を歌っているのです。[12月の雨]はそれが最もよく出ている曲だと思っています。

  • 戸澤恵里
    戸澤恵里

    鴨長明!ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

    そうか。ユーミンも、これなのか。

    私は、この一節ほど、健康の本質、生命の本質を美しく表現したものはないと思っている。

    心身もこのようであれば健康だし、何かの理由でどこかが止まれば病気になる。
    がんに罹る理由も細胞の中でこの流れが滞るからだ。

    文章自体がその内容同様に流れている、その流麗さに感動し、方丈記を買ってみたのだが、この一節以上に感動させられるところはなかった。

    人を言葉で感動させるには、本質的であること、無駄がないことに加えて、音やリズムも大切なんだなあと思う。