投票の時間。
まずは私。与田ちゃんと若月さんが人狼と見ているからどちらから吊っても良いはずだけど、当然与田ちゃんは残したい。さっきまでバチバチと言論を交わした若月さんに投票することで、道筋を立てた。
続いて若月さん。返す刀で私に投票。これで今日の構図は決まった。私と若月さんの戦いだ。
3番目、桜井さん。
「私はシンプルに考える。与田ちゃんと若月が人狼だと思う。与田ちゃんが人狼にしか見えない」
若月2、堀1。
4番目、白石さん。
「やっぱり私を占ったことが気になる。今日は一旦、未央奈を吊りたい」
若月2、堀2。
5番目、高山さん。
「今日の議論で、若月が人狼だってほぼ確信したところある」
若月3、堀2。
勝った。
西野さんは私を信頼している。若月さんに入れるかもしれない。
衛藤さんも、若月さんに投票するかもしれない。
与田ちゃんは最後まで票を待って、西野さんか衛藤さんが若月さんに入れた瞬間に、票を重ねればいい。さあ、どっちが間違うか…
「私、投票します…!」
耳を疑った。立ち上がったのは与田ちゃんだった。今若月さんに入れれば、全ての目論見が台無しになる。だから、今は私に入れるしかないはず。待てば勝ちもあったのになぜ…
「私に人狼という堀さんは絶対に偽物です!」
議論中戦うことは歓迎だったが、今日の投票はわけが違う。与田ちゃんの若さが出てしまったと、私は狼同士で会話ができないこの人狼というゲームのもどかしさを十二分に感じていた。
若月3、堀3。
「未央奈はしっかりと意見を述べてる。私は若月に入れる」
一筋の光。衛藤さんが、若月さんに投票した。結果、与田ちゃんがもう1票待てればここで勝っていた…でも今はそんなことを言っている場合ではない。すべては西野さん投票にかかっている。
最後に立ち上がった西野さんは、若月さんと私を交互に見つめた。
「ほんまにどっちかわからへん…でも、決めなあかん。ななは未央奈に投票する。決選投票にして話を聞く。でも、気持ちは未央奈を信じてる」
西野さんらしいなと思った。チームを引っ張る存在になってから、控えめながら全体を見ていた存在。その一票の重さを感じて、私は決選投票に進むことになった。私と若月さんの票数は、4で並んでいた。
「私は人狼を全て見つけました。やることはやりました。あとは皆さんに信じてもらうだけです」
私は敢えて淡々と語った。一方、若月さんの弁明は情熱的だった。
「私が人狼なら、仲間を殺すような真似はしない!今までの私の行動が人狼に見えたなら仕方ない。でもそう思わないなら、今日は未央奈を吊って!明日以降、必ずみんなに信じてもらえるようにするから!」
全員が緊張の面持ちとなる。決選投票は、一斉に処刑したい人に指を指す。与田ちゃんが裏切るか、何人が心動かされたか。勝負が決まる。
「せーのっ!」
掛け声とともに指が集まる。若月さんを指したのは…高山さんと、桜井さんだけ。衛藤さんが票を変えた。これにより、私は処刑されることとなった。
あと一歩で勝てたのに…!悔しさを感じつつも、この状況になった以上、私を指すしかない与田ちゃんが、きちんと私を指していることを確認して、遺言を残すことにした。
「私はこの決定に納得していません。皆さん、私を吊ったあと、2日しかないんですよ。その2日を、ちゃんと与田ちゃんと若月さんに使ってくれるんですよね。人狼は全部見つかってるんです。それで負けるなんて絶対にいや!皆さんのことを信じています」
やれることはやった。
何より、与田ちゃんがここまで生き残ったことが、私のやった行動が無意味でないという証明だ。
明日、若月さんを吊る。そうすれば、人狼は勝てる。私は仲間に全てを託し、村を去った。
(つづく)
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