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モウリス@ニコ生NEX ZERO

『指原莉乃座長公演@博多座』解剖③ 〜植木南央編〜 植木くんは「いないところで弄られる人」として有名だが、今回の博多座では「いないところで団子が売れてる」。 植木くんが和服の団子屋娘に扮したnetshop限定生写真が話題になり、博多座公演では、さっしーの提案により、本当に植木印の団子が売り出されることになった。これがまた常に3人くらいの微妙な列が出来ているのである。店先には「ほぼ等身大」の植木くんのパネルが立っている。 団子屋娘はご覧になった方も多いと思うが、ひと目見て必ず笑うくらい似合いすぎている。いや、似合いすぎてるだけではないだろう。植木くんだから何倍も笑えるのだ。岡田栞奈や渕上舞も似合いそうな予感はするが、団子屋開設までは至らないはずだ。その辺に、植木南央のあまりにも謎すぎる魅力の秘密が隠されているのではないか? 正直、お芝居の上ではそれほど目立ててはいない。博多座ではやや目立つようになってきているが、植木くんならではの瞬間が欲しいところではある。狸祭りのセットリストでは、いつもの流麗なダンスを見せてくれているが、なんと言っても際立つのはやはりMCだ。 かつて植木くんのMCは、ガチな地雷芸だった。メンバーたちが「え〜〜っ?!」と悲痛な声を上げるのがお決まりの、怖いくらい寒いトークが毎回のように繰り返された。そのオチのキレの悪さから「もやっと」が生まれたわけだが、当時はそれすらも事故の上乗せ的なヤバいフレーズだった。 しかし、植木くんはやめようとしなかった。何か確信があったのか、それとも他に手がなかったのか。ともかくそれは淡々と継続され、いまや「薄っすらと盛り上がれる様式」として完全に定着している。「努力は必ず報われる」を最も体現しているのは植木くんではないか?とすら思う。(もちろんそんなことはない) ここで「植木南央SHOW」について触れておこう。有名な夏祭りで行われたものではなく、『控えめI love you !』の抽選イベント「HKT48 SHOW!~博多のうどんはコシがなかとよ~」(東京は2014.11.15、福岡は12.21開催)で披露されたバージョンである。これが映像化されていないのは本当にもったいない。植木くんの総選挙順位をあと2位くらい押し上げるかもしれないほどの出来映えなのだ。 内容を簡単に言うと、等身大よりやや大きめの植木南央人形を椅子に座らせて、植木くんがそれにインタビューするという出し物だ。「等身大よりやや大きめ」というところが、薄っすら狂気じみている。しかし植木くんは、それをシュールには持っていかない。いつもの危うい植木くんトークだ。ひと言ひと言、何を言いだすか目が離せない。結果、矢吹奈子と並んで最も爆笑を巻き起こす出し物となった。夏祭りの「植木南央SHOW」がたまたま面白かったわけではないことを実証したのだ。このイベントは東京・福岡で計400人しか観ていないので、多くの人にとっては「植木史の空白」となっているが、彼女の成長記録として重要な出来事である。 そんな植木くんは、テレビのバラエティーとはそれほど相性がいいわけではない。ある番組では、収録分をまるまるカットされたという。『おでかけ!』の登板回数も多くはなく、出てもあまり抜かれない。そこにもまた、植木くんの謎すぎる魅力が隠されているのではないか?つまり、テレビのフォーマットに収まらない何か。ぼくは、むしろそれでいいと思う。植木くんは、どこまでも代替えの効かない特異点であり続けて欲しいからだ。伝統ある大衆劇場での公演というまたとない機会に、売店で爪跡を残すという予想だにしない芸当は、なかなか出来ることではない。先程、お芝居での植木くんに辛い評価をしたが、この団子屋の繁盛によって相殺していいと思う。むしろ植木くんらしいという意味では完全なる勝利だ。 ここまで書いて、まだ植木くんの魅力の正体に行き着いていないが、ひとつ考えられるのは「常に漂う不安感」である。「テーブルの端から3分の1くらいはみ出して、いまにも落ちそうに揺れている鉛筆」を想像して欲しい。その落ちそうで落ちない鉛筆が植木南央なのだ。安定した鉛筆はただの物体にすぎないが、「いまにも落ちそうな鉛筆」はエモーショナルである。団子屋生写真が笑えるのも、「もはやアイドルとは言えないくらいに団子屋になってしまっている」という危うさがあるからだと思う。そうした「危うい笑い」は、まるで無声映画時代のハロルド・ロイドやバスター・キートンのコメディ手法のようでもある。そして、ロイドやキートンが常に「紳士」であったように、植木くんもまた「淑女」である。握手に行った人は分かると思うが、植木くんは、いかにも育ちが良さそうな気品に溢れている。そうした紳士・淑女が「落ちそう」になるからこそ、スリルは倍化するのだ。最近、植木くんの面白さが微妙にエスカレートしているのは、彼女が美しくなってきていることと無縁ではないだろう。鬼に金棒とはこのことである。 繰り返すが、博多座の「お芝居」において、植木くんはそれほど高得点を出してはいない。しかし、団子がバカ売れしたことで、間一髪結果は出せた。いやいや、アイドルなんだから、それもまた立派な成果なのである。「博多座での爪跡」には違いないのだ。 この1年、植木南央推しの人が地道に増えているという。それは総選挙の結果にも示された。本人がもっと前へ出るようにすれば、まだまだファンは増えると思う。2年前のAKB48劇場出張公演の自己紹介MCで「アイドルらしいところをチラチラ見せて行きます!」と語ったように、植木くんはちょっと控えめすぎるのだ。そこがまた淑女植木南央のいいところでもあるのだけど、もう半歩くらいは前に出ていいと思う。植木くんからしか得られない「もやっとした笑い」を、ぼくらはもっと楽しみたいのだ。 (つづく)

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