特になしのトーク
トーク情報- トークが開始されました
特になし マルチェロマルチェロ 「翼はいらない」AKB48
「翼はいらない」が2016年に最大枚数を売り上げたことをファンが嘲笑するようなネット記事を読んだ。
これについて私は否定しない。もしかしたら楽曲への期待が裏返ってこんな発信になるのかも知れない。好みだってあるだろう。
これは私がもしこの会話の場に居合わせたらこんな話をするだろうというものである。
「もし翼があったら、、、」これはおそらくは太古から人間が抱いた空想や夢である。古代芸術にもしばしば鳥は描かれる。これは空を美しく飛翔する姿と、何より自分より天に近い場所に行ける鳥への羨望や憧れがあるからだ。
この羨望を強く抱いたライト兄弟や、それを受け継いだ同士たちにより人間は航空という技術を手に入れた。そういう意味では文化・技術の発展はこの''○○が出来たら、○○があったら”という欲求が生み出したとも言える。
考えると私たち、いつも何かを欲しがっている。休みがあったら、お金があったら、もっと才能があったら、、、という具合に。こんなに何不自由なく暮らせる社会に生きていながらこの通りだ。欲求や羨望は尽きない。
この曲の大サビはちょっぴり皮肉にも思える。空を飛ぶ鳥が私たちを見て思う「翼がないって 素晴らしい」と。
一日中羽根を動かす事もないし、のんびり寝っ転がることも出来て、自由に踊ることだって出来る、そんな感じだろうか。鳥も欲しがりなのだ。
この皮肉、優しく温かい皮肉であるが、これが何を語るかと考えると、”ないってことに良さもあるよ”という事だ。例えばいつも車で通う通勤路を散歩した時に見つけた素敵な景色や、道ばたのベンチでひと息つく心地良さ、そんなささやかなもの。
だから翼なんかなくったって幸せは足元に転がってるよ、そういうメッセージの曲だと私は思ってる。”無い無い言ってるより、今自分の目の前にある大切なもの見つけようよ”そんな気持ちが湧いて来る。
曲の構造もちょっとリンクするのが面白い。
この曲はサビがないような構造だ。Aメロがあって、Bメロがあって、Aメロに返ってワンコーラス。とってもシンプルな構造。
派手さもない。特にビートがリズミックなわけでもないし、ギラッとしたサウンドの装飾もない。そう、一聴すると何の変哲もない曲なのだ。そしてそれは私たち自身と同じ、夢もない、才能もない私たちと。
でも目をつぶって聴いてみると聞こえてくる。”大切なものがあるんだよ”って聴こえてくる。メロディが心の琴線に触れるのだ。もちろん言葉がメロディと重なってメッセージになってるのだと思う。気が付けば”ないもの”から”そこにあるもの”へ気持ちが移って行く。
こんな具合に、サビもない、派手さもないとても素朴な楽曲だけど、凄く大切な気持ちを伝えてくれるのが「翼はいらない」という曲だと私は思う。大切なものがたしかにそこにあるのだ。
もしこの曲の話になったら、こんな事言ってた奴がいたよって伝えて欲しいのである。