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有本 香 Kaori Arimoto

母が亡くなって丸二年がたつ。 父の一周忌のあと、桜の季節とともに三回忌を迎えた。まるでそのタイミングに合わせるように、実家を買いたいという人が現れた。これまでもいくつか話はあったが、いろいろと折り合わない点があり、 しかし今回は母が夢に出てきたりしたこともあって、弟と相談し、売ることにした。  母が亡くなる一月前。入院のため家を出る朝、母はなぜか病院に行くことに激しく抵抗した。病院までの運転のために早朝、東京から帰ってきた弟を見ると、「仕事はどうしたの? 私を病院に入れるために帰ってくるなんてどうかしてる。私は行かない。この家から一歩も出ない」とくってかかった。  なんだかんだ騙すようにして車に乗せ、楽しい話などしていると次第に母もドライブ気分になってきた。「私はね、この子(弟)の運転だと山道でも酔わないし、気分がいいの」と言い出し、出かける前の荒れようはどこへやら。とても嬉しそうだった。    それから約一月後、母は家に帰ってきた。  35年間、毎日掃除を欠かさず、隅から隅まで磨き上げてきた自分の城へ、物言わぬ姿となって帰ってきた。あの朝、駄々をこねた母を騙すようにして病院へ入れたことを心底悔いた。  その後、父を引き取り、実家はいずれ売ることにして、3カ月の間、東京と実家を行き来しながら家の中を片付けた。片付けの間に、田舎の一軒家暮らしの不便さが身に染みて、実家とは存分にお別れしたつもりだったが、それでもいざ人手に渡るとなると、少し感傷的になる。  40年近く前、この家を建てるときのこと、母と一緒に私の部屋の壁の色を若草色のようなグリーンと決め、そのイメージ通りに仕上がった部屋を見たときのことを鮮明に思い出したりした。でも、どれほど感傷的になろうが、今さら私がこの家に住むことも面倒をみることもできない。手を入れて大事に住んでくれる人が現れたことを喜ぶべきなのだ。    もう一度だけ来よう。父の名前が大きく書かれたこの立派な表札は私が外すことにしたいから。

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有本 香 Kaori Arimotoのトーク
トーク情報
  • 有本 香 Kaori Arimoto
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    見城 徹さん(幻冬舎社長)との収録終了。
    生配信しようかとも思ったけれど、ディープな話が多過ぎ、しなくて正解でした(笑) 近日公開、必見です。

    見城さん、お忙しい中、ありがとうございました💙

  • 有本 香 Kaori Arimoto
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    ■ 本日発売の夕刊フジ『有本 香の以読制毒』は、一面掲載です。

    この一面記事を告知した「夕刊フジ公式」のツイートへのリプライの大半が、「岸さん頑張れ」の声であることを喜ばしく思います。岸信夫議員の今後のご奮闘を、お兄様も見守っておられることでしょう。

    あす発売の月刊『Hanada』とあわせ、ぜひとも、ご購読くださいませ。

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  • 有本 香 Kaori Arimoto
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    先週末に発売された月刊『Hanada』10月号に、岸信夫(前防衛相/首相補佐官)へのインタビューを寄稿しました。

    「安倍派は私が引き継ぎます」という少々刺戟的なタイトルのとおり、岸氏は、安倍派の副会長に就任しました。

    インタビューでは、安倍・岸兄弟の幼い頃のエピソード、政治家としての二人の絆、病に倒れた兄との交流、そして兄の意思を継ぐ自身のこれから、日本の未来…… と、幅広いお話を伺っています。

    よろしければ、ご購読ください。

  • 有本 香 Kaori Arimoto
    有本 香 Kaori Arimoto

    安倍元総理の国葬儀の日に、テレビ各局が特番態勢? 一体何の冗談でしょうか。テロリストや過激派を擁護(ときには称揚)してまで、安倍さんの「国葬反対」世論を煽ったほぼ全てのメディアグループ。当日の金儲けだけはちゃっかりしようという彼らの欺瞞を許してはならない。

    https://www.sankei.com/article/20220925-5ELLUFXLC5MOBB7O56OGBBK5JM/

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  • 有本 香 Kaori Arimoto
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    9/25 発売の読売・産経・日経+地方紙に、飛鳥新社さんと有志18人の意見広告【安倍晋三元総理の死を深く悼みます】が出ています。

     前記の新聞各紙をご購読の皆様、ぜひとも、ご覧になってください。

     志半ばで、非業の死を遂げた安倍さんが愛したこの日本を、皆で力を合わせてもり立て、守ってまいりましょう。

  • 有本 香 Kaori Arimoto
    有本 香 Kaori Arimoto
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    A friend in need is a friend indeed.

    百田尚樹先生がお見舞いに来てくださいました。「ランチに行こう!」と仰り、なんと車椅子を押して連れ出してくれました。時々、車椅子の手を離して遊んでいたことは大目に見ます。

    百田さん、ありがとうございます!

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