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wakana♪
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乃木坂46『アンダーライブ』で見えた新機軸 演劇性とライブ性のバランスを読む  乃木坂46のアンダーライブは2016年、東京以外の地方への進出を大きな指針に掲げた。4月に東北各県でライブを行なった「東北シリーズ」に引き続いて、9月22~24日にかけて開催されたのが、広島・岡山・山口を回る『アンダーライブ全国ツアー2016~中国シリーズ~』である。同時に、今年のアンダーライブは、パフォーマンス面でも新機軸を打ち出している。ノンストップライブなどに代表される熱量の高さがトレードマークだった昨年までのスタイルに対し、東北シリーズでは「表現力を高める」という課題のもと、振付や曲間の繋ぎに演劇性の強い演出を採り入れ、ライブ全体に一連なりのストーリーを描いてみせた。今回の中国シリーズはそれを受けての第二弾ということになる。  1曲目、「制服のマネキン」の演出で、この中国シリーズでも前回からのスタイルを踏襲していることが示される。開演すると、紗幕の内側でメンバーそれぞれがポーズをとって静止し、「マネキン」として立ち現れる。そのマネキンたちの保管場所を清掃するスタッフ役として登場するのは、今回のアンダーライブでセンターを務める樋口日奈。樋口がマネキンたちに翻弄されるやりとりを経て、やがて曲が始まると同時にメンバーに生命が吹き込まれ、静と動のコントラストが効いた高い緊張感でパフォーマンスがスタートする。東北シリーズではライブ終盤で展開した、「マネキン」の演出をここでは冒頭で見せながら、今回は樋口がマネキンの中にただ1人の「人間」役として関わることで、見せ方のバリエーションはさらに深くなる。また、これまで乃木坂46のライブを届ける機会の少なかった地域にグループの存在を浸透させていくにあたって、グループの楽曲の中でも認知度の高い同曲を再解釈しつつ、まず1曲目で見せることの意義も大きい。  引き続き「ここにいる理由」「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」まで、マネキンの演出での流れで繋ぎ、演劇的な世界観を踏襲する一方で、今回はオーソドックスにライブの力強さを見せるパートも織り込んだバランスになっている。「欲望のリインカーネーション」「かき氷の片想い」といった2ndアルバム『それぞれの椅子』収録曲や、15thシングル『裸足でSummer』収録の伊藤万理華、井上小百合のユニット曲「行くあてのない僕たち」などでは、8月まで行なわれていた真夏の全国ツアーの流れをくんで、現時点での乃木坂46の姿を代表してみせる。そしてそれらの中に、2016年のアンダーライブの演出の軸を確立させるように、「海流の島よ」「魚たちのLOVE SONG」や「ポピパッパパー」といった、東北シリーズからの連続性を思わせるパフォーマンスを組み込んでいく。今年に入って構築しつつあるアンダーライブの新機軸と、グループ全体の現在地との双方を提示してみせるものといえるだろう。  グループの現在としてみれば、今回の中国シリーズは樋口日奈をセンターに据えたライブである。ライブ後半、アンダー楽曲の新たな一面を切り拓いた「シークレットグラフィティー」、そして樋口がセンターを務め、フロントに2期生からは寺田蘭世、渡辺みり愛が入る「裸足でSummer」へと続く流れで、このアンダーライブが15thシングルに基づいたメンバー構成であることが前面に出る。興味深いのは、センターとしての樋口の存在感が、サイドを固める伊藤万理華、井上小百合との関わりの中でひときわ浮かび上がるということだ。15枚目シングルCDにユニット曲「行くあてのない僕たち」、およびそれに連動したショートムービーが収録されたように、今回のシングルで伊藤万理華と井上小百合の二人はアンダーメンバーでありつつ、やや特異な位置にいる。すでにアンダーのセンターを経験し、選抜メンバーとしても成果を出し続けているこの二人と、そこに新たに伍する存在としての樋口という三者の構図が、現在のアンダーのフロントに深みをもたらしている。本編ラストのブロックでは、伊藤万理華センターによる「命は美しい」が披露される。ここで、「シークレットグラフィティー」等では樋口を中心にしていた三者の位置関係に変化が生じることになるが、三人が楽曲によって臨機応変に位置を変えることでむしろ、先にセンターの景色を見ていた二人と同じ大きさで並ぶ樋口の存在が引き立って見える。同時に、「命は美しい」の選抜メンバーだった伊藤万理華が中心に立ってパフォーマンスすることによって、昨年から今年にかけてのグループの来歴を振り返るような絵も重なって見える。  「命は美しい」ののち、井上がセンターの「自由の彼方」から「きっかけ」へと至るこの最終ブロックでは、伊藤や井上らに樋口が背中を押されて中心へと立つ、象徴的な振付が用意されている。ここにきて、今年のアンダーライブが表現する演劇性の高い振付と、メンバーそれぞれの現在を踏まえた構図とがひとつに重なり合って、ライブ全体を通じてのストーリー性が色濃くなる。セットリストの総仕上げとしての緊張感も高まり、現在の乃木坂46アンダーメンバーが表現できることの大きさを存分に見せてライブを締めくくった。  ストイックさや熱量の高さを基盤にしながら、やがて演劇性の高いパフォーマンスを志向し始めた乃木坂46のアンダーライブは今回、積み上げてきたそれらの糧とグループの現在点とを交差させながら、公演のバランスを編んでみせた。その性質上、メンバーの構成も置かれている立場も移ろっていくのがアンダーライブの常だが、グループとして歴史を重ねていくことで、アンダーライブというブランドによって体現される世界は、ますます充実度を増している。

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