加藤喬大のトーク
トーク情報加藤喬大 Shin SatoShin Sato 私の中の二十五年間を考えると、その空虚に今さらびっくりする。私はほとんど「生きた」とはいえない。鼻をつまみながら通りすぎたのだ。
(中略)
この二十五年間、認識は私に不幸をしかもたらさなかった。私の幸福はすべて別の源泉から汲まれたものである。
(中略)
二十五年間に希望を一つ一つ失って、もはや行き着く先が見えてしまったような今日では、その幾多の希望がいかに空疎で、いかに俗悪で、しかも希望に要したエネルギーがいかに膨大であったかに唖然とする。これだけのエネルギーを絶望に使っていたら、もう少しどうにかなっていたのではないか。
三島由紀夫
私の中の二十五年
産経新聞 昭和四十五年七月七日
三島由紀夫は、多くの優れた作品を残すことで名声を得たが、心の深淵を覗きみたことで、不幸になることを知っていた。
どんなに優れた作家でも、優れた作品を無限に発表し続けることはできない。
不幸になることを知りながらも、それでも、三島は書き続けた。それが宿命であった。