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柴田 剛(たけし)
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中山祐次郎著「泣くな研修医」幻冬舎 表紙全体の青は藍に近く、まさに涙をイメージしたような印象。 ページをめくるよりもまず、表紙を急に撫でたくなって、電車の中で撫でていました。 さわり心地の良い艶やかな紙質でした。 泣くな研修医というタイトルは読み手自身も励まされ、鼓舞されているようでした。 プロローグから胸がザワつく展開で、ぐいぐい惹き込まれ、いつの間にか主人公に寄り添い、感情移入していました。僕の中で雨野隆治はどこか暗さがあり表情も冴えない印象で、泣き虫な青年です。 しかし、どんなに先輩から怒鳴られても同僚の軽口に心を乱されても医師という仕事を辞めようとしない所に強さを感じました。 任された患者様に対する責任感や不甲斐ない自分自身への未熟さ、焦り、苛立ちを持ちながら日々、患者様と向き合う所に共感しました。また、彼自身が病気を患いながらも生きようとする患者様の強さに励まされているようでした。 そして、最終章で明らかになる雨野さんのバックボーンは、涙無しには見られません。 どこか暗さを持っている印象は、雨野さんの原体験によるもので、容易に解決は出来ないです。 きっと答えは彼自身が見つけなければいけません。 合コンのお話は、「医者の本音」でも掲載するかどうか最後まで迷われていましたが、今回は小説というエンターテインメント性のある読み物で、医療という死と隣り合わせのテーマの中にぱっと花のある明るい章でした。 雨野さんとの知り合った女性との今後の展開が気になりますね。 個人的なことですが、中学時代の「はるか」という同級生をふと、思い出しました。 まだまだ発展途上な雨野さん。医師としても人としても乗り越えなければならない壁は厚く高いです。 そんな彼の成長していく姿を追体験出来る様に続編も期待をしてしまいます。 中山祐次郎先生、担当編集者の小木田さん、幻冬舎社長の見城徹さん。出版に関わった皆様。 素敵な小説を出版して下さってありがとうございました。

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