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柴田 剛(たけし)

映画「閉鎖病棟 -それぞれの朝-」2019.11.4 感想 胸が締め付けられる程の切なさとじんわりと暖かくなる物語でした。 途中、本当に腹痛が起きてしまい苦しかったです。 病棟内の生活の再現率の高さに制作スタッフ、役者さんの心意気を感じました。 精神科病院の患者さん達の生活がどんな一日を送っているのか今まで精神疾患を取り扱った映画はあったのだろうけどもここまで丁寧に扱っている映画は初めてでした。 例えば、「任意入院」「閉鎖病棟」「保護室」といった専門用語が多く台詞の中に出てきました。 また、入院している患者さんはヘッドギアを装着する者もいたり、パニックを起こすと不安定になったり独語や幻聴が出現する症状が引き起こされる再現性も見たことのある風景でした。 病棟内で日常に行われるレクリエーションもしっかりと作られていました。ラジオ体操や習字、陶芸、カラオケ大会のシーン、余暇を過ごすシーンでは食事スペースで談話したり、野球をしたりと、まあ、カメラ小僧はほとんどいないと思いますが…病棟で過ごす人達は自分達で決めたルーティンを過ごしていて、この風景もよくある場面でした。 この映画では、ある程度金銭の自己管理も出来ている人達が登場していましたが、実際の病院内で自己管理出来ない方は看護師へ「○○が欲しいからいくら欲しい」と金額を申請して貰うこともしています。 担当医師のいい意味でドライな印象も患者さんに深入りしすぎず、精神科医っぽい気がしました。 あくまで患者としてみていている姿勢が伺えました。 ちなみに精神疾患には【完治】という概念は無く、【寛解】といわれています。 症状の出現と減退には波があり、表面化していないだけで、自己コントロールが出来ていたり、糸が解ける様に頭の中がすっきりしたりするそうです。 感じ方は人それぞれなので一概に正解は無いです。 今回、綾野剛さん演じる「チュウさん」は度々、幻聴が現れていました。 薬でコントロールをしたり、作業活動を通じて聴こえないはずの何かを抑えていました。 退院した場面は治ったからという事ではなく、症状が落ち着いていて定期的に院外に外出していること、他患者とも関わりを持ち、症状が出現してもある程度は対処出来ると判断され、何よりも母と暮らすということが一番大きな目的だと思われます。 妹夫婦の態度が自分の母親に対する嫌悪感を示す印象をもっていたはず。 遠い家族よりも当事者の事を理解しているのは近くの他人(看護師)でしたね。 看護師役の小林聡美さんがキーマンとして、要所要所で素敵な言葉を投げかけてくれていました。 小松菜奈さん演じる由紀ちゃんの心の解け方がわかり易く描かれていました。 ほぼ一言も喋らずいたけれど、特別に接せずに何となく秀丸さんと土いじり(陶芸)をして自然と話が生まれ、ああこれが本当の作業療法だなあと感じました。 終盤、陶芸小屋の中で行われた行為は目を覆いたくなるほど胸が抉られ、見ているのが辛かったです。 笑福亭鶴瓶さん演じる秀丸さん。 自身は生きづらさを抱えているのにとても暖かく、他者への接し方が優しい方という印象を持ちました。 あの喋り方がいいのかなあ。 ある出来事によって車椅子を使用しなければならない役でしたが、両足だけでなく両手にも障害が残ったと思う様な演技をしていました。 細かい描写にも注意を怠らない丁寧な演技をされていたと思います。 余談ですが… 精神科病院には基本的に鍵が掛けられていて、内外を守る為に施錠を義務付けられています。 開放病棟もありますが、急性期病棟や症状が再燃した時の保護室は鍵付きです。 急性状態から脱して症状が落ち着いてくると院内は自由に行動出来る状態になるので、それなりに動けます。 陶芸小屋には釜があり、他の施設とは別棟になっています。 刃物をしまう棚には鍵が付けられていました。特に刃物は危険な物として「自傷・他傷行為」に及ぶものとして管理されます。 精神科医、看護師は登場していましたが、やはり作業療法士らしい人物は登場していませんでした。 レクリエーションの一場面だけでもわかり易く使って欲しかったなあ。残念です。

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