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日本經濟新聞（夕刊）
２０２１年（令和３年）
１０月７日（木曜日）
夕刊文化　１２

目聞きが選ぶ３冊

プロセスエコノミー
尾原　和啓著
（幻冬舎・１６５０円）


過程を見せて巻き込む

経済学者　入山　章栄

　今後のビジネスを模索する企業人、マーケター、感覚の言語化を望む若い世代にとって必読の一冊だ。「ナラティブ」「顧客体験価値」「エンゲージメント」といった、いま注目の考え方はなぜ必要なのか。本書は「プロセスエコノミー」の一言で端的にまとめ、事例とロジックで解説していく。ユーチューバーの台頭や韓国ポップＢＴＳの世界的成功の背景にはプロセスエコノミーがあるのだ。
　評者も本書に同意する。現代は「成果物」としてのモノ・サービスは飽和状態で、差別化は極めて難しい。それらを生み出すプロセスをさらけ出して周囲を巻き込むことが必要だ。「成果物の消費」から「プロセスへの共感」という大きなパラダイムシフトを、本書は明確に提示している。
　敢(あ)えて本書に望むことを言えば、プロセスエコノミーをさらに体系化することだろう。例えばプロセスにはユーチューブ動画のように繰り返し再生できるものもあれば、同じ瞬間に料理を作るといった一回きりの経験もあるはずだ。体系化は読者の視点をさらに広げる。著者の続編を待ちたい。



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