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吉田真悟
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No.654 映画『ラーゲリより愛を込めて』 監督:瀬々敬久(たかひさ) 脚本:林民夫 原作:『収容所(ルビ:ラーゲリ)から来た遺書』(辺見じゅん著/文春文庫刊) 製作:平野隆 配給:東宝 上映時間:134分 【キャスト】 山本幡男:二宮和也 山本モジミ:北川景子 松田研三:松坂桃李 新谷健雄:中島健人 相沢光男:桐谷健太 原幸彦:安田顕 2022/12/14 (12/12観映) 知らなかったが全て実話だそうだ。 山本幡男(はたお)さんやその仲間達によって届けられた遺書は実在した。犬のクロも。 第二次世界大戦後、シベリアに不当に抑留された人が約57万5千人いた。極寒の強制収容所(ラーゲリ)で強制労働を強いられた。 一番長い人は戦後11年も経ってやっと日本への帰国(ダモイ)が叶う。亡くなった抑留者は5万8千人にも上った。 改めてロシア(旧ソ連)への怒りがフツフツと沸き上がる。私の義理の父も抑留されていたそうだ。詳しいことは何も聞けずに鬼籍に入ってしまった。 こういった戦争映画を観ると、生きている事に罪悪感を持ってしまう。 好き勝手生きている事に怯むし、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 77年前の戦争に負けてしまい、戦後のどさくさに悲惨な引き上げ体験談を数多く聞いてきた。聞くに堪えないものばかりだった。だから戦争映画を観るのは嫌いである。ラーゲリと聞くと山崎豊子の『不毛地帯』やアレクサンドル・ソルジェニーツィンを思い出す。もっと突き詰めるとヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』に行き着 く。(読んだ事は無いが) 絶望の淵に立った時、自分はどうなるだろう?松田研三(松坂桃李演じる)や相沢光男(桐谷健太演じる)や原幸彦(安田顕演じる)になるだろう。 絶望に犯され、卑怯で卑屈で他人を妬んで生きる屍だ。決して山本幡男(二宮和也演じる)にはなれない。 だからこそ奇跡の物語として語り継がれているのだと思う。山本幡男に感化されて、絆(ほだ)されて、深い仲になったら、見捨てられなくなる。山本旗男は厄介な人なのだ。だけど出会った人をあまねく幸せにする。魔法使いの様な人だ。映画全編が思ったより明るくて、笑えて、助かった。 しかし、ほとんどの場面で、登場人物達の悲惨な現実を見た時、不当で理不尽で、増幅する怒りをどこにぶつけたら良いのか?おろおろして、ただただ泣くしかなかった。無力、無知、無能で申し訳ないと。 私はずっと安田顕が演じた原幸彦の立場で無責任に映画を眺めていた。 「私に近づかないでください。私は家族に会いたいためにあなたを売ったのです。」という台詞で理解出来たから。しかし、確実に山本に魅入られていく。やはり、こいつのためなら命も惜しくないとさえ思う。山本の体調を心配して大きな病院で見て貰いたいと、皆でストライキまで起こすはめに。最後は危険を顧みず仲間と遺書を分断し暗記して帰国し、山本の妻子に届ける。悪魔に魂を売ったのに、山本の力で人間に戻った。複雑な生き物なのに行動は単純だった。その後の「慶応の4番バッター」は幸せに暮らしたのか?はまた別の話である。安田顕がこの頃気になるのよ。 なぜ、このタイミングで映画を製作したのだろう? コロナ禍にロシアのウクライナ侵攻、世界中が上手くいっていない。 格差社会に閉塞感。。。。こんな時代だからこそ、山本幡男さんの様な人が登場し、皆を救って欲しいな。 身近にいるかもしれないな。探してみよう。 最後にいつもいつも素晴らしい映画をご紹介頂く見城先生に最大の感謝を込めて「ブラボー!」と心で叫びましたよ。一度で良いから先生と同じ高みから映画や小説を体感したいものである。無理だけれどね😅

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千冊回峰行中!
トーク情報
  • 吉田真悟
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    No.725
    『汝、星の如く』
    凪良ゆう著
    (2022/8/4 講談社)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/8に視聴

    凪良ゆうさんの本は2冊目。
    愛媛のとある島出身の同級生の男女の長い長い切ない話。
    一人は漫画の脚本家として成功し、もう一人は刺繍工芸家として成功するが、
    そのタイミングがずれて、哀しい物語となるが、最後は納得してしまう。
    凪良ゆうの親ガチャ第二弾。どちらも思っていた以上に面白かったが、こちらの方が私的には好きだな。複雑な家庭の複雑な人たちが細部までしっかりと描かれていて実際にいそうだなと思った。

  • 吉田真悟
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    No.726
    『アリアドネの声』井上真偽著
    (2023/6/21 幻冬舎)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/9に視聴

    地下深くからの災害救助の物語。
    ただし、要救助者は三重苦(話せない、見えない、聞こえない)の障害者であった。
    ドローンを使った救助劇のラストで、ある疑惑が晴れる時になるほどと膝を打つ。
    ハラハラドキドキ。でも近未来的で身近に感じられず、それほどのめり込めなかった。

  • 吉田真悟
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    No.727
    『同志少女よ、敵を撃て』
    逢坂冬馬著
    (2021/11/17 早川書房)

    202404/01
    ※Amazon Audibleで3/10に視聴

    異色すぎてぶっ飛んだ。
    第二次世界大戦下の独ソ戦を舞台に、女性狙撃隊員の過酷な現場を描いてるのだがリアルすぎて、ハラハラドキドキの連続でのめり込んでしまった。
    当時の心に刺さる人間同士のやりとりを何故日本人が小説にできたのか?
    著者の筆力に引き付けらる。忘れられない本となった。

  • 吉田真悟
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    No.728
    『ある男』
     平野啓一郎著
    (2018/9/28 文藝春秋)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/12に視聴

    林業に携るある男が木の下敷きになって死んだ。
    しかしその男の兄が死んだのは弟ではないと言い放つ。サスペンス仕立てでその男が誰なのか、徐々に明らかになっていく過程で唸るし、驚愕の結末に。

    平野啓一郎さんって理屈っぽくて、傲慢な物言いで生理的に合わなかったのだが、全ての登場人物が良く描かれていて面白かった。戸籍交換のトリックも面白い。本を買い、映画も観てみようと思う。

  • 吉田真悟
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    No.729
    『悪人』
    吉田修一著
    (2007/4/6 朝日新聞社)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/14に視聴

    映画はまだ観てないが、妻夫木聡、深津絵里らの映画キャストを知っていた。
    全くこの原作からは想像できない俳優のチョイスだと思った。

    抑圧されている人たちの殺人事件の話で、犯人はだれで、なぜ?が後半まで引き延ばされて気持ち悪くなっていく。
    話が冗長と思うが、ラストの逃避行(対幻想)や供述まで結論が解らず、やきもきとするのだが、最後は胸熱となり思ったよりは良かった。本を読み終えた現在では映画にあまり興味が涌かない。😅

  • 吉田真悟
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    No.730
    『紙の月』
    角田光代著
    (2014/9/13 角川春樹事務所)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/17に視聴

    男に溺れ、金や見栄に溺れ、堕ちて逃げた主人公を関係者の証言でプロットしてあぶりだしていく。
    徐々に不協和音が広がり、そういう可能性が自分にもあると思わせる恐怖を感じた。とても怖い本。
    最終的には犯人は捕まらない、そこが?ではあるが、映画で主演の宮沢りえさんの顔がちらついた。
    妖艶なシーンはあるのか?映画で確認しよう。

  • 吉田真悟
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    No.731
    映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

    2024/04/05
    (3/18 U-Nextで鑑映)
    シェフである父とSNSに詳しい息子とシェフの元部下の3人の愉快な料理ロードムービーでした。
    美味しそうな食べ物が沢山出てくるなか、キューバサンドなるものを是非食べてみたくなった。
    (空腹時に観てはいけない)
    父子の微妙な関係のなか、息子(パーシー)が可愛くて、自分の息子の少年時代を思い出してしまった。

    シェフとブロガーとのやりとりが結局ハッピーエンドに終わり、妬ましくなるが、ダスティン・ホフマンが頭の固いレストランのオーナー役なのは、勿体ないよね?

    登場人物:
    カール(シェフ)
    パーシー(カールの息子)
    マーティン(カールの友人、元部下)
    イネス(裕福なカールの元妻)
    ラムジー(料理評論ブロガー)

  • 吉田真悟
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    No.732 
    『アメリカン・アンダードッグ』

    2024/04/25
    (3/19 AmazonPrimeで鑑映)

    NFLのレジェンドクォーターバック、カート・ワーナーのサクセスストーリィ(実話)である。

    冒頭、大好きなサンフランシスコ49ersのQB、ジョー・モンタナの活躍映像が映り胸熱となる。
    そのジョー・モンタナに憧れるカート・ワーナー少年がQBの練習を開始するシーンからこの伝説は始まる。

    後半は大体ついていけるが、前半を観ていて、こんなにも苦労をしていたのかと驚く。いやはや大変な男だと再認識した。

    3回観て3回とも同じ所で泣いてしまった。
    常にフットボールの成績で自分を証明し続けた男が、バツイチで二人の子持ち(さらに長男は視覚障害者)のブレンダに求婚するシーンでである。
    また目の不自由な息子のザックの演技がさらに泣かせてくれる。
    この時点でカート・ワーナーは本当に欲しいものを手に入れ、勝者足りえたのである。その後は神様からの彼へのご褒美みたいなもので華々しい。
    アリーナフットボールで活躍し、NFLのラムズのスカウトの目に止まり、トライアウトを経て、控えのQBとして契約する。
    アンダー・ドッグとは、「咬ませ犬」という意味である。「運命はアンダー・ドッグに味方するんだ、それを一緒に証明しよう」とラビット関根に似たヘッドコーチに諭される所で血がたぎる。
    その後、エースQBが怪我したため急遽、正QBとしてスーパーボウルチャンピオンにまで駆け上がる。
    シーズンMVP、スーパーボウルMVPを受賞し後に殿堂入りする。

    エンドロールの最後の最後まで観るとブレンダと7人の子供を生し、ザックともども幸せに暮らす映像が流れ温かい気持ちに溢れる。なんてこった、堪らない映画である。是非ご覧あれ。

  • 吉田真悟
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    No.733 
    『八日目の蝉』角田光代著
    (2007/3/25 中央公論新社)

    2024/05/14 
    (Amazon Audibleで3/19視聴)

    不倫相手の子供を衝動的に盗み出し、数年も連れ回す主人公に徐々に情が移っていくが、いつ捕まるのかと緊張感がずっと続いた。

    母親ごっごに付き合わされるが、決して不快ではない。子を守る母親として主人公の「希和子」になりきり、行く先々で世話してくれる他人の人情に触れ、逃亡生活をハラハラしながら追っかけて、最後は誘拐が発覚して捕まってしまい一旦ホットするも、今度は「薫」(子供)の目線でその後の第二章が始まる。希和子と同じような不倫をしてしまう薫に、またかといった諦めを感じる。

    希和子と薫の最後のすれ違いについても、やきもきしつつ諦めてしまう。
    そこで出会ったなら、お互いを十分に理解できただろうかな?