No.674 『ユーチューバー』  村上龍著 (2023/03/30 幻冬舎) ※『ユーチューバー』『ホテルサブスクリプション』『ディスカバリー』『ユーチューブ』の４作品を収録 2023/04/03（4/1読了） 別々の短編４作品が収録されていると思っていたが、実はつながっている。 時系列に読むとすると『ホテルサブスクリプション』『ディスカバリー』『ユーチューブ』『ユーチューバー』の順になる様だ。 登場人物は少なく、 世界一か日本一もてない男（老舗お茶屋の創業者の子孫）、村上龍さんと思われる老作家：矢崎健介、矢崎と一緒にいる三十代か四十代か五十代の女性（銀行に勤める、富裕層相手のファイナンシャルプランナー）、ユーチューブ動画を撮るときのアシスタントのイチカワの４人のみ。 村上龍さんの私小説ととらえると珍しいし面白い。どこまで本当かは不明だが、ご自分のことをあまり語らない龍さんの赤裸々な女性遍歴って、かなり興味がある。 本作は、笑うところはほとんどないのだけれど、随所にいままで聞いてきたエピソードと照らし合わせて、素の龍さんを探すのが楽しみでもある。 福生時代の話からは『限りなく透明に近いブルー』に結びつきそうだし、テニス好きの記述からは『テニスボーイの憂鬱』（まだ読んでなかった）へ、 ロワールの赤ワインばかり飲むシーンでは『ワイン一杯だけの真実』（すこし強引か？）へと意識がつながる。 コロナでほとんど宿泊客のいないホテルを舞台に、いろいろな知識から蘊蓄を語る紳士的老作家の矢崎、相槌を打つだけの茶屋をやめた男、恋人のはずだが矢崎と少し距離のある三十代か四十代か五十代の女、軽快などうでも良い会話のところどころに譲れない言葉の棘があって、龍さんらしいこだわりが垣間見える。 グラフ対マンドリコワを観て、ゼレンスキーのことを考え直し、CATVのディスカバリーチャンネルを少し調べて、現在の龍さんの立ち位置が確認できて良かった。 そろそろ、未読の本をまとめて読まねばと思う。