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吉田真悟

『無趣味のすすめ』 村上龍氏のエッセイ。 抜粋 その1 (無趣味のすすめ) 趣味とは基本的に老人のもの。 趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。 真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまり、それはわたしたちの「仕事」の中にしかない。 (「好き」という言葉の罠) 好きという感情には、理性一般を司る前頭前皮質ではなく、深部大脳辺縁系や基底核が関わっている。理性ではなくエモーショナルな部分に依存する。だから、大抵の場合、本当に「好きなこと」、「好きなモノ」、「好きな人」に関して、私たちは他人に説明出来ない。 「好き」が脳の深部から湧いてきて、それを説明するのが理性なので、そこに本来的なギャップが生まれるからだが、逆に、他人に分かりやすく説明できるような「好き」は案外どうでも良い場合が多い。説明可能な分かりやすい「好き」は何かを生み出すような力にはなり得ないのだと思う。 (決断する力) 最優先事項を把握している場合、決断には法則がある。もつともやっかいで、もっともむずかしく、もっとも面倒な選択肢が正解ということだ。だからわたしは今の日本のほとんどの閣僚や政治家が理解できない。非常に、やっかいでむずかしく面倒なことをやらなけらばならないのに、多くの政治家は閣僚に選ばれたときに喜色満面の表情をみせ、誇らしげだ。決定権と責任を持つポストを与えられて喜んでいる上司を信用していけない。優秀で、現状の困難さをわかっている人ほど、責任と決定権を、与えられたときには、憂うつになるはずだからだ。 (ビジネスと読書) 読書が重要なのではない。情報に飢えるということが重要なのだ。 (リーダーの役割) リーダーの「資質」などどうでもいいと思う。どんなに優れた素質があっても、「何をすればいいのかわからない」リーダーは組織を危うくする。 「わたしが日本を変えます」という政治家に対し、いつもわたしは「まずお前が変われ(代われ)」と思う。どう変えるのか、そのために何をするのか、優先順位はどうなっているのか、結果が出なければどう責任をとるのか、そういった具体的なことを言わないリーダーは信頼できない。 (謝罪という行為は) そもそも何が起こったのか、どういう経緯だったのか、どういう原因で起こったのか、自分はどう関与したのか、責任は誰にあるのか、損害を把握しているのか、どのような対応をしたのか、事態は解決に向かっているのか、いつ解決するのか、再発防止のためにどのような対策をとるのか、損害賠償について具体的にどう考えているのか、今回のトラブルに対し誰がどういう責任をとるのか、そういったことをできるだけ速やかに明らかにすることが、謝罪よりもはるかに重要である。 (ビジネスにおける文章) 小説の文章も仕事における文章と同じように「正確さと簡潔性」が求められる。 脳に負荷をかけて、できるだけ正確に書く、という面白くも何ともない作業の繰り返しに過ぎない。物語に破じょうがないか、人物の造形に誤りがないか、登場人物の行動と態度と発言に不自然さはないか、描写に過不足がないか、比喩は適当か、読者が読んでいくときのリズムを壊してしまうような省略や反復はないか、何度も何度も読み返し、まるで偏執狂のように、余分な文章や言葉をそぎ落とし、足りないシーンや文や言葉を書き足していくという、地味といえばこれほど地味なものはない、というようなことをえんえんと繰り返すのが「小説の執筆」だ。

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千冊回峰行中!
トーク情報
  • 吉田真悟
    吉田真悟
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    No.733 
    『八日目の蝉』角田光代著
    (2007/3/25 中央公論新社)

    2024/05/14 
    (Amazon Audibleで3/19視聴)

    不倫相手の子供を衝動的に盗み出し、数年も連れ回す主人公に徐々に情が移っていくが、いつ捕まるのかと緊張感がずっと続いた。

    母親ごっごに付き合わされるが、決して不快ではない。子を守る母親として主人公の「希和子」になりきり、行く先々で世話してくれる他人の人情に触れ、逃亡生活をハラハラしながら追っかけて、最後は誘拐が発覚して捕まってしまい一旦ホットするも、今度は「薫」(子供)の目線でその後の第二章が始まる。希和子と同じような不倫をしてしまう薫に、またかといった諦めを感じる。

    希和子と薫の最後のすれ違いについても、やきもきしつつ諦めてしまう。
    そこで出会ったなら、お互いを十分に理解できただろうかな?

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    No.734
    『キングスマン ファースト・エージェント』
    『キングスマン』
    『キングスマン ゴールデン・サークル』
    3作品、3/20に観覧終了(Amazon Prime Video)

    本気で作った紳士の国の映画だった。
    何度も観たが、痛快で面白い。金をかけているのがよくわかる。
    そして人が簡単に死ぬため罪悪感がない。そこが良い。

    「ファーストエージェント」
    1914年当時(どこまでが本当か私にはわからないが)
    凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公が、
    英国国王ジョージ5世の協力の下、高級テーラー内に国家権力から独立した諜報機関「Kingsman」を作る話。

    ・イギリス国王のジョージ5世、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世、ロシア皇帝のニコライ2世がいとこ同士だったとは知らなかった。
    ・「羊飼い」を名乗る謎の男が世界を混乱させるべく秘密会議を開いていたが、ロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイマタ・ハリ、ロシアの革命家レーニンといったそうそうたる歴史上の人物が登場する。後に世界を震撼させるキーパーソンたち。なのでなかなか、スケールの大きい時代がかったスパイアクション映画となっている。

    「キングスマン」
    キングスマンのメンバーの一人が冒頭で死んでしまい、その後任を危険な試験で選抜する。かつて自分の父がメンバーだったエグジーがもう一人の女性と選ばれるが、スマホを使い世界中を暴力的に洗脳する悪と戦うといった超アクション大作である。杖や傘などの独特の武器や防御アイテムが面白い。エグジーの成長と義理の父親との対決に鳥肌がたった。少年が一人前の大人にいきなりなってしまい、まぶしいのである。

    「ゴールデン・サークル」
    麻薬密売組織ゴールデン・サークルの女ボスとの闘いがメインのストーリィ。
    麻薬に仕込んだ毒物により世界中がパニックになるが、すんでところで解毒剤を手に入れて世界を救うというお話。
    米国諜報組織ステイツマンとキングスマンの関係(バーボンやテキーラって太陽に吠えろか?)が近いのか遠いのかいまいちわからなかった。親しい仲間の死がさらっとしていて心に沁みた。

    新作が出たら必ず観るよ。

  • 吉田真悟
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    No.735
    『変な家』 雨穴著(2021/07/22 飛鳥新社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ホラー・サスペンス。
    緻密にデザインされたディテールは凄いの一言。
    本当に怖くなり鳥肌が何度も立ったが、引き寄せられて先を読みたくなる。
    中毒性がある本である。夜に一人では読まない方が良いな。おしっこ漏らしそうだから、映画は観ない(^^)/

  • 吉田真悟
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    No.736
    『変な絵』 雨穴著
    (2022/10/20 双葉社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ばらばらの不気味な話がどう合体していくのか?
    結末を知りたいのだが、恐ろしいし、不気味だし、躊躇しながら先を読んでしまう。一体誰が主人公?犯人?被害者?いびつな絵の意味が分かってくると恐怖が何倍にも膨れ上がる。
    最終章でやっと最初の絵の意味が分かり、主人公が分かって全部つながった。
    どえれー怖かった。
    夏にぴったりの本。

  • 吉田真悟
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    No.737
    『吉原手引草』 
    松井今朝子著
    (2007/3/1 幻冬舎)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/23に視聴) 
    身請けが決まった遊女・葛城が、幸福の絶頂に突然失踪する。多くの人のインタビュー(3人称多視点)でその事実が明らかになっていく。
    どうも、仇討ちが隠れているし、人情噺でもある。
    よくある形式だが、書くのは大変であろうと思う。
    いきさつを忘れてこの文章を今、書いている。はぁ。

    第137回直木賞受賞作と聞いて気になって古本屋で買った。大変面白かった。

  • 吉田真悟
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    No.738
    『夜と霧』
    ヴィクトール・E・フランクル著(2002/11/06 みすず書房)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/24に視聴) 
    極限の恐怖でも生還することが分かっていたからなんとか読めたがきつい本だ。
    人間の尊厳やプライドが粉々になったとき、人は何をしだすのか?
    人類全体の負の貴重な体験記録である。子孫に語り継がなくてはならないと思った。
    今日石で追われた人達が明日は別の民を蹂躙する。
    今、ガザで起きていることはこの本とは全く関係ないと思おう。人類の進歩はいつまで止まったままだろう。共通の敵が現れない限り、その連鎖は繰り返すのだろうなぁ。愚かなり

  • 吉田真悟
    吉田真悟
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    No.739
    『読書という荒野』
    見城徹著
    (2020/04/03 幻冬舎文庫) 

    2024/07/02 (Amazon Audibleで3/25に視聴) 
    読んだはずなのに覚えていないことだらけで愕然とする。見城先生のお祖父様は森鴎外の友人で高名な医者だったそうだ。今更知る驚愕の事実。多分忘れただけなのだが。

    いったん読むと、とんでもなく読みたい本が増えてしまう。いや、前回もピックアップしたはずだが、怠慢である。『罪と罰』、『邪宗門』から読んでみるか。

    そうすると『仮面の告白』、『豊穣の海』、『金閣寺』などはいつになったら読めるのだろうかな。細かく読書計画を立てなくてはならないなぁ。早く読めよ自分!

    読書が荒野になる日まで精進しよう