そんな、江野ほなみが目の前にいる。
およそ20年ぶりに、大阪の街で。
「私の事覚えてる?」
江野ほなみは言う。
僕は
「覚えてる!く、クリエイトハンドの」
江野ほなみは嬉しそうに
「そ!久しぶりやねえ」とにっこり笑った。
「なんであの時クリエイトハンドやめたん?教室私一人でめっちゃ寂しかったわ笑」と続けて言う。
僕は
「ご、ごめん…」
と言う事しかできなかった。
20年経った今でも、申し訳なさと恥ずかしさが押し寄せた。
正直に話せない自分が情けなかった。
江野ほなみはそんな僕の事など気にせず
「私、こんなんも出来るようになったんよ!」と
両手で「松井秀喜」を作ってくれた。
松井秀喜にしか見えない見事なクリエイトハンドだった。
あの頃と変わらず明るく振る舞う江野ほなみと
もっと話がしたいと思い、
どこか呑みにでも誘おうかと思ったが
松井秀喜の顎の部分を構成する薬指に
光る指輪が見えたので
なんとなく誘うのはやめた。
江野ほなみはたまたま出張で大阪に来ていたらしく
次の会議があると言い、去っていった。
一応連絡先は交換したが
もう会うことはない。そんな気がした。
ただ、これからは
ふと思い出す事もあるだろう。
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