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ロングコートダディ堂前

10月28日(月) 博士から連絡があった。 「ちょっとえぐいの発明したかもしらん。来てほしいかもしらん。」 博士とは、3年ほど前にバーで知り合って以来仲良くしている。身なりは汚いが良い人だ。 博士はロボット系と天津飯を専門に研究している。 僕は博士の研究所へと向かった。 研究所の中に入ると、博士がイスに座り 豪華な天津飯(イカとかが入っている)を食べていた。 僕に気付いた博士は 「天津飯美味しい。そして新たに発明したロボットを見てほしい」 と言った。 僕は「そして?」と言った。 博士が 「ドア、オープン!」と大きな声で叫んだかと思うと カンカンカンと天津飯を勢いよくかきこみだした。 あっという間になくなる天津飯。 胃袋のドアをオープンしたようだ。 食べ終えた博士が 「ふぅぃ…ではこっちに来てくれ」と言い 別の部屋へ案内された。 部屋に入ると、一体の人型のロボットが正座をしていた。 耳をすましてみると 「シクシクシクシク…」と言っている。 「これが新しく発明したロボットですか?」と聞くと 「ちがう。これは前から発明してた。 葬式で人が少なかった時用のロボット。 喪機(もき)。」 僕は「喪機か」と言った。 「見てほしいのは天井に張り付いてるやつ、見て」と言うので天井に目をやると 銀色の球体が天井に張り付いていた。 なんだあれは。 張り付いているというよりかは、浮いているという状態の方がしっくりくる。まるで風船のようにゆらゆらしている。 博士は 「張り付いているというよりかは、浮いているという状態の方がしっくりこない?」と言った。 僕は 「あれはどういうロボットですか?」と聞くと 「浮機(うき)。浮くから。エンジンとかの動力とかがあるわけじゃなくて、球体の内部で空気よりはるかに軽い気体を作りだし続けてるって感じ。すごくない?」と言った。 「何に使うんですか?」と聞くと 「まあ、もうちょっと大きく改良できたら あの、デパートの屋上の宣伝みたいなやつあるやん、 アドバルーン?あれに使えたりするしなあ」と言ったので 僕は 「ほほ」と言った。 博士は 「まあ、今のところは風船の方が便利。」と悲しい笑みを見せた。 博士は「あ、でも電源を切ったらすぐ下に降りてくるからそこは風船との違いかも!」と言い リモコンの切ボタンを押した。 すると浮機は天井からスッと離れ、落下し始め そのまま喪機の上に墜落した。 粉々になる浮機。 正座をしていた喪機は、勢いよく倒れて 地面にひれ伏すかたちになり 「シクシクシクシク」という泣き方から 「ウッウッウウッ…」という泣き方に変わった。 博士は喪機を起こしながら 「泣くな」と言った。

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