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ひふみ.感想文の記録
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    『こころ』夏目漱石 著 

    ≪中学時代に読んだ夏目漱石の『こゝろ』は、僕に『生きるとは何か』を考えさせた。≫
    (見城さんのご著書『読書という荒野』より)

    高校生の時に読んだこの本は、胸の奥に楔を打ち込まれたようで衝撃的でした。でも、正直なところよく理解出来なかったのです。
    あらためて読んでみると、
    明治天皇の崩御。乃木希典大将の殉死。
    この時代背景にもこの小説の鍵があると思いました。自然に春秋があるように時代も移り行く。その時代の価値観とか美徳が、主人公たちの背景にある。漱石は未来からやってくる読者をもどこか想定していると思えたのです。
    裏切り、欲望、孤独、「罪」の意識さいなまれ、自己を否定し続け、己れに絶望する。「罪」とは、エゴとか我執という言葉が当てはまるでしょうか。
    読書によって生きることの矛盾に突き当たり、命の儚さや自分の人生を思索することは、人間としての成長につながるんだと思いました。

    それにしても、夢中になって読みました。繊細な感情の襞を表現する豊富な語彙や文章の絶妙な言い回しは、日本文学の神髄です。読みやすいですが、凄く深みがあり心に残るのです。忘れていた久しぶりの感覚でした。
    森鴎外の「山椒大夫」ラストの表現に打ち震えたことや、三島由紀夫の「近代能楽集」に感動したことなども思い出し、美しい日本語の文章に触れたい気持ちにになりました。

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    [三流シェフ]
     三國清三 著
    幻冬舎 刊

    がむしゃらでありながら繊細で、大波に真正面から立ち向かい、数多の困難を乗り越えてきた。三國シェフの息遣いや苦悩や喜びの本音が散りばめられています。その姿の背景に北海道・増毛の壮大で過酷な自然の風景が広がっていくのです。

    「雑用こそ人生の突破口だ」それは、一流に共通する言葉であると思います。
    「三國君、ジュネーブに行きなさい」
    大きな運命の扉が開いた瞬間でした。

    アラン・シャペルの「セ・パ・ラフィネ」(洗練されてない)の言葉も、私の胸に突き刺さりました。その答えとなるゲストブックのメッセージに、私はフリーズしました。そして、感動の涙が溢れてきました。

    ミシュランのお話は、三國シェフにとって人生の苦味部分だと思います。
    しかしながら、
    人生を芳醇な味わいに仕上げるには必要な五味のひとつであると思いました。
    高みを目指す者たちの果てしない浪漫。
    全身を、心もまるごと揺さぶられました。
    自伝というよりも、神話の世界でした。

    この本をご紹介くださった見城さんに感謝致します。

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    2023.5.6(土)

    映画『シェルタリング・スカイ』
    監督 : ベルナルド・ベルトルッチ
    原作 : ポール・ボウルズ
    音楽 : 坂本龍一 他 
    1990年公開

    『友よ、また逢おう』を読んで、
    映画『シェルタリング・スカイ』を観ました。
    体力を著しく奪われてしまった。
    凄い映画だった。
    サハラ砂漠の美しい景色。灼熱の太陽、蒼い月夜。映像と音楽が見事にシンクロしていた。
    表現不可能な世界観…。書きたいことは沢山あるけれど、自分の力不足をいたく感じてしまふ…。
    心の平衡感覚がぐらんぐらんして、不安と恐怖の迷宮へ引きずられて行きそうだった。
    身の危険を感じて、実家の母へ電話した。
    「庭の梅の実なっている?」なんて。
    普通の日常に戻りたかった、満月の夜。


    ↓ラストのポール・ボウルズのナレーションが心に残る。坂本龍一さんのアルバム
    「async」にも引用されているそうです。

    「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思う。だが、物事はすべて数回起こるか起こらないかだ。自分の人生を左右したと思えるほど大切な子供の頃の思い出も、あと何回心に思い浮かべるか? せいぜい4、5回思い出すくらいだ。あと何回満月を眺めるか? せいぜい20回だろう。だが、人は無限の機会があると思い込んでいる」

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    見城徹見城徹

    是枝裕和監督[怪物]を観た。起こってしまった一つの事態の推移をそれに関わるそれぞれの人の視点で見ると人の数だけ真実が出来る。記憶もそれぞれに全く異なって刻印される。2人の子供を巡って母親、父親、校長、担任の教師、そして子供たちの真実が錯綜しながら丹念に描かれる。[怪物]とは見事なタイトルだ。複雑に絡まり合うそれぞれの事情と心情こそが[怪物]を創り出す。こんな映画はありそうでない。いや、是枝裕和監督と脚本の坂元裕二にしか出来ない。脚本家と監督。2人の稀有な才能の出会いが謎に満ちた美しい画像となってスクリーンを貫き、もう1人の天才・坂本龍一の音楽と相俟って観る者の細胞の隅々にまで染み渡る。2人の少年が秘めた内面を痛いような瑞々しさで表現し、母親の安藤さくら、校長の田中裕子の演技が冒頭から観る者を引き摺り込む。田中裕子の死んだ目は作品と共に日本映画史に残るだろう。

  • ひふみ
    見城徹見城徹

    極端に言うと3人の[裕](是枝裕和、坂元裕二、田中裕子)と2人の[さかもと](坂本龍一、坂元裕二)の映画である。勿論、安藤さくら、永山瑛太、そして、2人の少年も素晴らしかったです。

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    2023.6.3(土)

    大雨の翌日の今日、
    映画「怪物」を観て来ました。
    正直に白状すると、よくわかりませんでした。
    じわじわとボディブローが効いてくるように、整理されてくるのでしょうか。

    ただ、
    リトークさせていただいた上記の
    見城さんの文章がいかに凄いか、
    いかに素晴らしいかが分かりました。
    凡人には書けません。

    坂本龍一さんの音楽が心に染み入ります。

    映画館の外に出ると、まぁるくて大きな明るいお月さまが出ていました。
    私はあと何回満月を見るのだろう。
    切ない気持ちになりました。
    坂本龍一さんのご冥福を謹んでお祈り申し上げます。

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  • ひふみ
    ひふみ

    是枝監督が「怪物」というタイトルについて語っているのが印象的だった。
    「人は自分が理解できないものと出会った時、相手を得体の知れないものとして理解を止めてしまう。そうした時に怪物は現れる。この作品を撮りながら、コロナ禍で世界中が分断され、いたる所で怪物らしきものが現れていると感じた脚本は二年前に書かれたが、今の社会を予見していたのかも」

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    2023.Nov.
    [栄光のバックホーム] 幻冬舎刊
     中井由梨子 著

    人の命は儚いけれども、透明な暖かい光がこの本の中には流れていて、心の中の蝋燭に火が点るようです。涙無くしては読めない本ですが、純粋に溢れる涙は全身を浄化してくれる。誰もが生きづらさとか不安に押し潰されそうになりながら、陰惨な荒んだ現実社会に佇んでいる。この涙が結界を張ってくれる気がして、横田慎太郎さんの言葉を決して忘れない。
    力尽き天に召されても、多くの人々の心に生き続ける存在なのだと思いました。

  • ひふみ
    ひふみひふみ

    この本の出版された直後に阪神の38年ぶりの日本一が決まり、横田慎太郎さんの希望も叶いました。TVで阪神とオリックスのパレードを観ていたら、地元の熱い歓喜伝わってきます。

    2019年9月、横田選手の引退試合のバックホームを見城さんが[報道ステーション]で偶然観たことから、その偶然から何かが始まった気がします。数々の奇跡の連鎖を引き寄せて、歴史的な大きなムーヴメントが達成されたと思えてしまうのです。
    チャンスの神様は、前髪がフサフサで後ろがツルツルって言われてます。アンテナの張り方、スピード感や熱狂が、チャンスの前髪をつかむことなのかもしれません。

    [栄光のバックホーム] のあとがきにある、『20歳のソウル』の浅野大義くんの導きのくだりにも驚きでした。偶然だけれど必然であって、不思議だけれどいろんなご縁が複雑にも絡み合い、手繰り寄せ合い、ゆるやかな大河の流れになっていくのですね。
    スクリーンに横田慎太郎さんが蘇る奇跡を楽しみに待っています。

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