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吉田真悟

「幻冬舎」と「太田出版」の不思議な友情 『ダ・ヴィンチ』2007年4月号(メディアファクトリー)の「ヒットの予感EX」という記事(取材と文・岡田芳枝)でとりあげられていた『編集者という病い』(見城徹著・太田出版)という本の紹介記事の一部です。 【人は彼を「風雲児」と呼ぶ。風を鮮やかに巻き起こすその剛腕は羨望を集め、また嫉妬する者はやっかみの舌打ちを鳴らし、枯渇するどころか勢いを増す底知れぬ力に懼れおののく――。出版界において、これほど長きにわたって話題を振りまき、注目を浴び続ける編集者が、かつていただろうか。  その男、見城徹が、編集者として生きてきた日々を振り返ったはじめての著書『編集者という病い』を出版した。 「角川書店にいた頃から”本を出さないか?”というオファーは数え切れないほどあったけれど、そのたびに辞退してきました。というのも、”自分が本を出すなど、作家の方々に失礼だ”という気持ちがあったからです。だから、彼が担当でなければ、編集者である限り本を出すつもりはまったくなかったんです」 見城が言う「彼」とは、太田出版の前社長である高瀬幸途氏。高瀬にとって『編集者という病い』は、編集人、発行人としての最後の仕事になる。 「高瀬は、僕の先生であり、ライバルであり、いつも互いに助け合ってきた親友。そんな彼の最後の仕事が僕の本になるというのなら、傲慢だけど相応しいと思ったんですよ。だって、彼のささやかな人生をいちばん知っているのは僕だと思うから。俺のなかには本を出す立派な理由があるんだ。そう自信を持って言えるんです。  それは27歳のことだった。見城は2年前に、海外翻訳権の代理店に勤めていた高瀬の伝手で角川書店にもぐり込み、首尾よく正社員になって、めきめきと頭角を現していた。そんなとき、高瀬は見城の前から忽然と姿を消す。 「頭角を現すためには、人を出し抜いたり、陥れたり、戦って倒したりしなくちゃいけない。高瀬は搾取のない理想郷をつくるためなら戦うことができる男だけれども、自分が頭角を現すために戦う男じゃなかった。まるでチボー家のジャックのような男だから」  自分を支えてくれたように、僕は彼を支えることができなかった――。突然の失踪に、見城は罪の意識を感じずにはいられなかった。しかし3年後、二人は再会を果たすことになる。約束の場所は、神保町の喫茶店。待ちきれずに外へ出て、見城はその姿を探した。やがて、片足を引きずりながら前より痩せた高瀬が逆光を浴びてこちらに向かってくるのがわかった。その顔に微笑が浮かんでいるのを確かめると、滂沱たる涙がこぼれ落ちた。 「沢木耕太郎さんの本に『深夜特急』があるけれど、深夜特急に乗るというのは”脱獄する”というトルコの囚人の隠語。それはとりもなおさず、いままでの自分の人生を脱獄するという意味なんです。かつて非合法革命党派に所属していた高瀬がアラブに行っていたのか、地下に潜っていたのか、日本中を旅していたのか、3年間何をしていたのかわからないけれども、こう思ったんです。『君もまた、君の深夜特急に乗っていたんだな』と。  その後の歩みは、非常に対照的だった。見城がミリオンセラーを連発し、自ら幻冬舎を立ち上げる一方、高瀬はサブカルチャーから現代思想までを網羅する、これまでにない出版社として太田出版を引率し、一時代を築き上げる。対照的ながら、それぞれ唯一無二の編集者となった。 「まったく好対照だけど、彼を鏡にすると自分の人生が見えるというような、そんな想いがあるんです」】

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前略 見城先生
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