ナナ散歩だよナナ散歩だよ16日前毎日繰り返される日常生活の早朝へん…目覚まし時計も黙るほどのラジオ体操の音楽と神さまの有無を言わさぬ声に叩き起こされすでに起きていったりきたりの散歩を待つナナの横で寝ぼけた動きで深呼吸を待つ私呆れたナナは一旦戻った小屋から顔を出して変な踊りが終わるのを待っている階段を駆け降りてゆくナナの後ろから手すりにつかまり滑り落ちてゆく私寒い部屋の空気を数えながらやっと着替えを終え玄関で待つナナのもとへコートに帽子を手にしてさあナナ散歩だよ…モーニング珈琲にはまだ届かない朝のアイドリング・たいむ…3
ナナ散歩だよナナ散歩だよ15日前モミジの鮮やかな紅黄から朱く白く山茶花が咲き始めた朝の散歩道椿より少し早く花開き寒い冬の訪れをホッと聴かせてくれるコートの襟が深まる頃に旧年中の思いを連れて花びらを一枚一枚舞い落とし始める見えなかった物ごとが見え始めたとき当たり前だった日常生活にわからないことが言葉にならないことがいっぱい噴き出してくるきっと今は何かが変わるときなのかも知れない…3
ナナ散歩だよナナ散歩だよ14日前メタセコイヤの落葉が始まり寂しげな公園がゆっくりとふわふわのバーントオレンジ色に染まり出す…近くの国道では朝からサイレンが鳴り響く張りつめた空気で赤く染まり出す…穏やかな日曜日の朝と心騒ぐお休みの朝スフマートな気分が漂うこんなときは朝挽いたばかりのモカの薫りに閉じこめて一緒に飲み干してしまおうおはようの日曜日神さまの眠る朝に…3
ナナ散歩だよナナ散歩だよ11日前時の流れを感じさせる砂時計の一粒の命砂オリフィスを抜けて生から死へ…さかしまな欲望とともに死から生へ…繰り返す天地鳴動劇流れに逆らう一粒の蹉跌を見つめつつ思う冬の寒空を見上げるとオリオン座の三ツ星の間隙の一点から未来の時間のアルファ粒子が降り注いでいるのがわかる時を刻む虚しさを砂時計は教えてくれる3
ナナ散歩だよナナ散歩だよ10日前年末はずっと忙しいと思って来たけれど…いろいろあるしいろいろあってもお互いの心模様はいつまでたっても伺い知れないからだからこそそれぞれの時間がゆっくりと干渉し合ってゆける水と油は交じりあわないけどおもいっきり振って振ってぶつかってこすれあってひと味違うドレッシングの出来上がり神さまと私の一年がもうすぐおわりもうすぐはじまる積み重ねてきた日常生活がひとつ咳払いをしてはじめの一歩に帰るとき平行線路は交じりあわないけどそれでいいどこまでも続いてゆければそれでいい… 4