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しい空があることを、いや空があることさえも忘れているかも知れないから。  しかし膨大な数の中から224ページの本をうめる写真を選ぶのは、気の遠くなるような作業だった。空という茫漠とした生き物は想像を絶するほどつかみ難く、空を知れば知るほど出口のない迷路に迷いこんでしまった。  そして2年という時が過ぎ、私は未完の空の本を3冊作り、今やっと迷路から抜け出しこの本を作り終えた。本当に長いあいだ空を彷徨っていた気がする。最後の1枚の写真を選び終わった時、不思議な体験をした。啓示を受けたかのように、「空は空(くう)なり」と突然心に浮かんだのだ。それは真っ暗な闇に突然光が当たり、目の前のものがはっきりと見えた時のような感覚だ。「空は在って無いもの、無くて在るもの」なのだ。  空は昨日から今日、今日から明日へと、遥か彼方の太古から途切れることなく繋がり、未来へと永遠に向かう。私たちの人生も、その時々の中で生まれ消えていく雲が織りなす空のようなものかもしれない。  長いあいだ心を覆っていた雲は一瞬にして消え、私の空は晴々と青く、どこまでも澄みわたっていた。このあとがきを書きながら、ああ、そういうことだったのね、とひとり頷いている。  不眠症だった東京での暮らしは今は遠い過去となり、海辺の暮らしにもすっかり慣れた私はお日様よりも早く起き、夜明け前の清々しい空気につつまれ陽が昇るのを待つ。それは静けさに満ちた至福の時間だ。  これからも私はこの高台の部屋から毎日わくわくする気持ちで空を眺め、美しい空を集め続けるだろう。今、生ていること、この肌で陽の光を、風を、雨の冷たさを感じ、この目で途方もなく素晴らしい空を仰ぎ見ることができるその一瞬、一瞬に、深い喜びと感謝を感じずにはいられない。  そしてこの空がいつまでも美しく、この地球が青く輝く美しい星であり続けることを祈ってやまない。最後にこの本のなかにあなたの好きな空があることを願っています。 2009年3月 逗子にて 横山正美

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    ウチの庭の、金木犀。
    花が、咲き誇りまくっちょります ©︎ろこ。
    薫りを、振り撒きまくっちょります ©︎ろこ。


    金木犀を見ると、私は小学校の「手洗所」を思い出すんです。

    木造二階建ての校舎に、千人からの児童が通う、マンモス小学校だった、我が母校。
    裏門のそばに、別棟でトイレが建ててありました。
    石の壁に用をたして、下の幅広な溝を流してるいく、小便所。
    もちろん汲み取り式の、大便所。
    風が吹くと、カラカラと音を立てて回るトップエンドがついた、あまり役に立っていそうもない、排気用の煙突。

    母校の、百年からの歴史を物語る、古い古い作りの、「手洗所」の看板も凛々しい、由緒正しきトイレだったんです。

    そのそばに、消臭用も兼ねてでしょう、大きな金木犀が植えられていました。
    秋の盛りには、それはもう甘くて芳しい薫りで、トイレの悪臭を和らげてくれていたんです。


    金木犀で思い出す、もう一つのもの。
    それは、あの曲なんです。

    鳳晶子さんの「みだれ髪」を入れた歌詞から、「明星」を「みやうじやう」と読む粋。
    与謝野鉄幹との道ならぬ恋の、自らの熱情を歌った歌集を持ってくる若さ。
    「あの高速道路の〜」の疾走感は、晶子の熱い歌の引用で、よりその勢いを増すように感じられます。

    一発屋でしたが(失礼)、この曲は、私には忘れえぬ名曲なんです。

    それでは聴いてください、
    キンモクセイで
    『二人のアカボシ』



    ( 。・_・。 ) 53

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    『二人のアカボシ』
    演奏:キンモクセイ
    作詞:伊藤俊吾
    作曲:伊藤俊吾

    夜明けの街 今は こんなに
    静かなのに また これから 始まるんだね
    眠る埋立地(うみべ)と 化学工場の
    煙突に 星が 一つ 二つ 吸い込まれ

    沢山 並んだ 街の蛍たちも
    始まる今日に 負けて
    見えなくなってゆく
    君とも 離れることになる

    あの 高速道路の橋を
    駆け抜けて 君 連れたまま
    二人 ここから
    遠くへと 逃げ去ってしまおうか

    消えそうに 欠けてゆく月と
    被さる雲は そのままに
    二人のアカボシ
    遠くへと 連れ去ってしまおうか


    橋の継ぎ目と 二人に届く
    電波には 懐かしいあのメロディーが
    聞こえてるかい 「みだれ髪」に
    沁みるよう 明星(みやうじやう) 遥か 彼方へ

    見渡せば 青 続く信号機が
    二人の想いを
    照らせばいいのにな
    明日の僕らは 何処にいる

    また 今日も 汚れてく街は
    蝕む煙を 吐き出す
    君の 知らない
    遠くへと 連れ去ってしまおうか

    瞬かない星が 一つ
    夜明けの街に 消えてゆく
    二人 ここから
    宛てのない明日を 探そうか



    僕の決意と 伝えきれない
    想いが 街の音に 消えないうちに

    朝焼けの水蒸気が
    隣の空を彩る
    懐かしいメロディーは
    風と共に 終わる
    君の 髪の毛が 震えてる

    あの 高速道路の橋を
    駆け抜けて 君 連れたまま
    二人 ここから
    遠くへと 逃げ去ってしまおうか

    さようなら 街の灯りと
    月夜と 二人のアカボシ
    最後の想いは
    君が 振り向く前に 話そうか


    夜明けの街

    夜明けの街

    夜明けの街



    ( 。・_・。 ) ♪

    #二人のアカボシ
    #キンモクセイ