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日わたしは着物を着て成人のお祝いをしてもらう日だったのか、と少し泣いた。でも小さいころから家族に誕生日すら祝ってもらったことなんて一度もなかったし、こんな成人式の日はなんだか自分らしくすら感じて気持ちを切り替えて寝てしまおう!と思ったとき、家のチャイムが鳴った。  嫌な予感は的中で、インターホンのカメラ越しに映っていたのは父親だった。  わたしは鍵を開け父親を家の中に入れた。  父親はいつものように「お金のことなんだけど・・・・・・」と言った。わたしは父親に成人式のハガキを見せ、「今日わたし、成人式だったみたい」と言ってみたけど父親は興味なさそうに、「ほんとぉ・・・・・・」とだけ言って、いつもの困り顔で、「お金をさぁ・・・・・・」と言った。  わたしが、「こないだ渡したお金で全部だよ、もう次のお給料が入るまで、お金ないよ」と言うと、「困っちゃったなぁ・・・・・・」と、全面的にわたしに自分の人生を押し付けてそこから動こうとしない。わたしは本当にお金がないんだということをわかってもらうために、「この間からそこのマイメロディの貯金箱で500円貯金を始めたの。今はもうそのお金しか、本当にないよ」と言うと父親は「そうか・・・・・・。じゃあ、それ、いい?」とその貯金箱を持っていこうとして、わたしはさすがに感情的になり、わんわん泣いたけど、父親はなにも言わずにわたしの貯金箱を持って去っていった。  小さいころからわたしの両親はそんな感じで、支払いができなくてしょっちゅう電話が止まっていたり、学校に行く前に借金取りがきて、お母さんは今いないと言いなさいと納戸に隠れる母親に言われ、スーツを着た大人に玄関先でお母さんがいるのはわかってる、お嬢ちゃんが呼んでくれるまでおじさんたちは帰れないと言われ学校に行けなくなったりした。それ以外にもたくさん親のいいなりになってきて、親になにをされても我慢して言うことを聞くのが当たり前だと思って生きてきたけど、その都度わたしは深い傷を負っていた。  こんなのおかしいと言おうものなら、母親は鬼のような顔をして、「なんにもおかしくない! うちより変な家なんてたくさんあって、うちはすごくまともだ!」とわたしを黙らせ、他人にうちのことは絶対に話しちゃいけないと言われてきたから、わたしは子どもながらにいつも自分で想像した『普通の家』のふりをして生きていた。支払いできず家の電話や電気が止まっていたり、給食費を払ってもらえたりしていなくても。  でも母親は悪い人間ではなかったと思うし、きっと彼女が育った環境にも大きな問題があったり、子ども時代に負った深い傷を癒せないまま自分の問題に気づけず毎日が過ぎてしまっていたりして、悪気もなくただ目の前の日々を母親なりに一生懸命生きてい

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NE MU IN DE $ 10
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    ウチの庭の、金木犀。
    花が、咲き誇りまくっちょります ©︎ろこ。
    薫りを、振り撒きまくっちょります ©︎ろこ。


    金木犀を見ると、私は小学校の「手洗所」を思い出すんです。

    木造二階建ての校舎に、千人からの児童が通う、マンモス小学校だった、我が母校。
    裏門のそばに、別棟でトイレが建ててありました。
    石の壁に用をたして、下の幅広な溝を流してるいく、小便所。
    もちろん汲み取り式の、大便所。
    風が吹くと、カラカラと音を立てて回るトップエンドがついた、あまり役に立っていそうもない、排気用の煙突。

    母校の、百年からの歴史を物語る、古い古い作りの、「手洗所」の看板も凛々しい、由緒正しきトイレだったんです。

    そのそばに、消臭用も兼ねてでしょう、大きな金木犀が植えられていました。
    秋の盛りには、それはもう甘くて芳しい薫りで、トイレの悪臭を和らげてくれていたんです。


    金木犀で思い出す、もう一つのもの。
    それは、あの曲なんです。

    鳳晶子さんの「みだれ髪」を入れた歌詞から、「明星」を「みやうじやう」と読む粋。
    与謝野鉄幹との道ならぬ恋の、自らの熱情を歌った歌集を持ってくる若さ。
    「あの高速道路の〜」の疾走感は、晶子の熱い歌の引用で、よりその勢いを増すように感じられます。

    一発屋でしたが(失礼)、この曲は、私には忘れえぬ名曲なんです。

    それでは聴いてください、
    キンモクセイで
    『二人のアカボシ』



    ( 。・_・。 ) 53

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    『二人のアカボシ』
    演奏:キンモクセイ
    作詞:伊藤俊吾
    作曲:伊藤俊吾

    夜明けの街 今は こんなに
    静かなのに また これから 始まるんだね
    眠る埋立地(うみべ)と 化学工場の
    煙突に 星が 一つ 二つ 吸い込まれ

    沢山 並んだ 街の蛍たちも
    始まる今日に 負けて
    見えなくなってゆく
    君とも 離れることになる

    あの 高速道路の橋を
    駆け抜けて 君 連れたまま
    二人 ここから
    遠くへと 逃げ去ってしまおうか

    消えそうに 欠けてゆく月と
    被さる雲は そのままに
    二人のアカボシ
    遠くへと 連れ去ってしまおうか


    橋の継ぎ目と 二人に届く
    電波には 懐かしいあのメロディーが
    聞こえてるかい 「みだれ髪」に
    沁みるよう 明星(みやうじやう) 遥か 彼方へ

    見渡せば 青 続く信号機が
    二人の想いを
    照らせばいいのにな
    明日の僕らは 何処にいる

    また 今日も 汚れてく街は
    蝕む煙を 吐き出す
    君の 知らない
    遠くへと 連れ去ってしまおうか

    瞬かない星が 一つ
    夜明けの街に 消えてゆく
    二人 ここから
    宛てのない明日を 探そうか



    僕の決意と 伝えきれない
    想いが 街の音に 消えないうちに

    朝焼けの水蒸気が
    隣の空を彩る
    懐かしいメロディーは
    風と共に 終わる
    君の 髪の毛が 震えてる

    あの 高速道路の橋を
    駆け抜けて 君 連れたまま
    二人 ここから
    遠くへと 逃げ去ってしまおうか

    さようなら 街の灯りと
    月夜と 二人のアカボシ
    最後の想いは
    君が 振り向く前に 話そうか


    夜明けの街

    夜明けの街

    夜明けの街



    ( 。・_・。 ) ♪

    #二人のアカボシ
    #キンモクセイ