No.588 『スローカーブをもう一球』 　山際淳司著 （1985/02/10 角川文庫) 2022/02/01（1/23読了） この本を読むきっかけとなったのは、幻冬舎）コグマ部長さん達の野球特集YouTube配信である。 部長は高校二年の時にこの本を読んで感動して業界に入ろうと思い、実際角川書店に入社したそうである。 失念していたが、見城先生の『編集者という病い』に山際淳司さんとの出会いについての記述があり改めて読み直していろいろと繋がった。本音で話したことがあまり無い人だったらしく、先生との距離を感じ少し寂しかった。 全８編が納められているが『江夏の21球』がやはり抜群に心に響く。 テレビやYouTubeで何回か観たが、テキストでも野球の面白さを存分に伝える傑作であると思う。 古葉監督、西本監督、解説の野村監督、江夏に寄り添い優勝に導いた衣笠らはもう鬼籍に入ってしまったが。 簑島対星稜の死闘『八月のカクテル光線』、日本フライ級チャンピオン春日井健を描いた『ザ・シティ・ボクサー』、そして表題の高崎高校野球部の快進撃を描いた『スローカーブをもう一球』、巨人軍のバッティングピッチャーをレポートした『背番号94』の順で好きである。 総じて私の知らない主人公だらけであり、だから若いときに読んでも心に刺さらなかったのだと反省した。 今読むと、少しキザな言い回しながら、味があって、その一瞬が煌めく映像的な文章だと思う。沢木耕太郎さんよりは取材対象との距離は感じるな。若くして亡くなっており、作品は少ないと思うので探して読んでみよう。 実は「Sports Graphic,Number 0号」に載ったという、1979年のウィンブルドン決勝、ロスコ・タナー vs ビヨン・ボルグ戦のスポーツノンフィクションが一番読みたいのだが、 残ってないそうである。残念。 【参考】 ◆山際淳司さんの著作（1980年当初　時系列） https://ja.m.wikipedia.org/wiki/山際淳司 「７９’ウィンブルドン決勝 ロスコ・タナーＶＳビヨン・ボルグ」 ーSports Graphic, Number 0 （Jとして投稿） 「江夏の21球」 ーSports Graphic, Number 1 1980年4月1日創刊号 「たった一人のオリンピック」 ー「文藝春秋」1980年8月号 「八月のカクテル光線」 ー「465球の奇跡」 （Sports Graphic, Number 9）を改題 1980年12月号 「背番号94」 ー「野生時代」1981年3月号 「スローカーブをもう一球」 ー「野生時代」1981年4月号 「ザ・シティ・ボクサー」 ー「野生時代」1981年5月号 「ポール・ヴォルター」 ー「野生時代」1981年6月号 「ジムナジウムのスーパーマン」 ー「壁に向かって打て」 （「小説新潮」1981年8月号）を改題 「スローカーブをもう一球」単著 　ー「角川書店」1981年？ 「スローカーブをもう一球」文庫 　ー「角川文庫」1985年？