ログイン
詳細
ホワイト

あとがき  中学三年生の時、ウイルス性の肝炎に罹ったことがある。原因はたぶん、おやつがわりに食べていた海産物だ。三ヶ月も入院した。かなりの重症だったのだろう。  あの入院で、ぼくの性格が変わったと姉は言う。  病気をする前は、とんでもない暴れん坊で、将来は絶対まともな人間にはなれないと思っていたらしい。昆布を実家の前の浜に干していたのだが、その昆布の上を走り回って粉々にしてしまうのが、子どもの頃のぼくだった。  家計を支える大切な昆布に、なぜそんな乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)を働いたのか。乾燥した昆布を踏むとパリパリと小気味のいい音がする。それが面白かったのだろうか。とにかく悪戯ばかりしているので、家族みんながぼくの将来を危ぶんでいたらしい。  ところがあの入院を境にぼくはすっかり真面目になり、料理人になるという人生の目標と出会う。肝臓にいいというしじみ汁を毎日作って病院に持ってきてくれた母親 や兄姉、見舞いに来てくれたたくさんの同級生のおかげだ。

前へ次へ
眠〝いれぶん〟です。
トーク情報