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曲が町になる
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  • あいちゃむ
    タクマタクマ

    こんにちは!!(*^^*)
    「曲が町になる。」
    第1話となります🎉

    今回の話は「履物と傘の物語」のストーリーということで、全4話を予定しています😊

    僕がノベルを書こうと思った理由はですね、
    ①文章を書くのが好き。
    ②秋元さんが書く詞を尊敬してる。
    ③その詞に込められた想いを皆さんと共有したい。

    まとめますと、
    そうです。完全趣味です😅
    すいません^^;

    これから、曲と共に進んでいく下町の行方を、楽な気持ちでお付き合いして頂けると幸いです☺️

  • あいちゃむ
    タクマタクマ

    🎶第1話.
    「履物と傘の物語」-1-🎶


    ここ赤晴町(あかばれまち)は、人口755人の小さな下町。
    住人は大抵知り合いで、交通便も何不自由ない。
    挨拶が飛び交い、人に懐いた鳩が平和を象徴している。
    しかしこの町は昔から、比較的濃い酸性雨が降るらしく、木花はなかった。
    住民はさほど気にしていないらしいのだが……。

    さてさて、何だか今日の赤晴町も賑やかですね。
    おっと何だかお店で騒いでますよ。
    これは2人の老婆のお話。


    ********
    ********
    ********


    ゴチン!!!!
    駄菓子屋さんの店内に鈍い音が響いた。

    「早ぅ謝りぃ!!!!」

    腰の曲がったお婆ちゃんが小さな男の子を怒鳴っている。

    「まぁまぁトネばぁちゃん、翔太君も反省してるみたいですし……。」

    店員さんも“その辺に”と言わんばかりに口を挟んだ。
    10歳を迎えた翔太は、この町では有名な“悪ガキ”。
    町の人にとってこれくらいのことは日常茶飯事なのだ。
    それでもお婆ちゃんの怒りは収まらず、

    「そういう訳にもいかん!!!またお店の物を勝手に持ち出して!!!もう、一度や二度のことじゃな……」

    「ばぁばが買ってくれんきやろ!!!」

    そう言って翔太は勢いよくお店から飛び出した。

    「どうも申し訳ありません。孫も間が差したと言いますか……。」

    翔太はトネばぁちゃんの孫にあたる。

    「気にしないで下さい。外は雨降ってますしそろそろ暗くなりますので、トネばぁちゃんもどうぞ気を付けてお帰り下さい。」

    トネばぁちゃんの家は町の端にあり、1階で傘を作って販売し、2階で娘夫婦と翔太の4人で暮らしている。
    町の人は皆、そこで傘を買っていた。
    トネばぁちゃんは深々と頭を下げてお店を後にし、家に向けて、コツコツと下駄を鳴らした。


    ********


    その頃翔太は、家の向かいにある履物屋の縁側に座っていた。

    「あらあら。また拳骨されたのかい??可哀想に。はい、どうぞ。おはぎでもお食べ。」

    「やったーー!!!!チエばぁのおはぎ大好き!!!ばぁばもチエばぁみたいに優しかったら良かったのに!!!」

    履物屋のチエばぁちゃんは、トネばぁちゃんとは対照的で温厚な性格のためか、翔太はよくチエばぁちゃんの家に遊びに来る。

    「でもお店の物を勝手に取ったらいかんよ。翔ちゃんも自分の物を取られるのは嫌じゃろ??お店の人も同じじゃ。お腹がすいたらいつでもおいで。チエばぁがいつでもおはぎをご馳走してあげる。」

    翔太は納得したのか、左手に持ったおはぎを口に押し込み、

    「チエばぁありがとう!!!また来るね!!!」

    そう言って翔太は自分の家へ帰って行った。

  • あいちゃむ
    タクマタクマ

    🎶第2話.
    「履物と傘の物語」-2-🎶


    翔太が家に着くと、母は炊事を終え、父はお風呂に入っていた。
    カレーのいい匂いが玄関まで届いている。

    「……た、ただいまー。」

    手を洗って部屋に入ると、母とトネばぁちゃんは席に座っていた。
    翔太の家では食べる定位置が決まっており、翔太の隣にトネばぁちゃん、ちゃぶ台を挟んで翔太の前に母、その隣が父で2:2で向かい合って座る。
    席に着き、母をチラッと見ると、目を瞑って腕を組んでいた。
    母は怒っている時、いつもこの体勢になる。
    気まずい空気の中、父がお風呂から上がってくるのを待っていると、

    「お、翔太。帰ってたか。」

    ……上がってきた。
    いつものパターンだと、これから説教が始まる。

    「何か言うことはないの??」

    母がそう言うと、始まったなと翔太は心の中で呟いた。

    「ん??」

    「翔太、ちゃんと言いなさい。」

    「何が??」とぼける。

    「全部知ってるから、翔太の口から説明しなさい。」

    こういう時、父はいつも知らん顔だ。
    あんまり長く引きずると、母の機嫌は悪くなる一方だと感じた翔太は、駄菓子屋さんでお菓子を勝手に食べた事、お婆ちゃんに怒られた事、全てを説明した。

    「何か言う事があるんじゃないの??」

    「……ごめんなさい。」

    「お婆ちゃんにも謝りなさい。」

    「ごめんなさい。」

    「次からはこういうことはしちゃダメだからね。」

    母のいつもの締めの言葉を聞き、
    (よし、今日もこれで一件落着だな。)
    父がそう思った束の間、

    「何でいつも……!!」

    「ばぁばは何でいつもママに言うんだよ!!!」

    思いがけない翔太の言葉に父は驚いた。
    いや、父だけじゃなく、母も驚いた表情を浮かべたが、トネばぁちゃんだけは落ち着いた表情で箸を置いた。
    翔太は続けた。

    「それに何で駄菓子屋にばぁばが来るのさ!!!!拳骨も痛いしさ!!傘作るのやめてまで来ないでよ!!!!」

    慌てて母が何か言おうとすると、翔太はバンッ!!と箸を置いて自分の部屋に入っていった。
    母が追いかけようとするとトネばぁちゃんは、

    「ほっときなさい。今日チエにも少し注意されたらしくて気が立っとったんじゃろ。きっと自分でも反省しとる。それに小さい頃のあんたはもっと酷かったぞ。」

    母はそう言われると、

    「……パパも何とか言ってよ。」

    そう呟いて会話は途切れた。


    翔太の家でそんなことが行われていた最中、外で起きている大騒動にこの時は誰も気付いていなかった。

  • あいちゃむ
    タクマタクマ
    あいちゃむ
    曲が町になるのリトーク専用トークを作ってしまいした!タクマさんの気に触りますか?いやとかあったらいってくださいね!!

    僕もそのうち『曲が町になる。』専用のトークを作る予定ですが、気に触るとかまったくないですよ😁

    いつもありがとうございます(*^^*)

  • あいちゃむ
    タクマタクマ

    🎶第3話.
    「履物と傘の物語」-3-🎶


    ********
    ********


    騒動に気付いたのは、会話が途切れた30分後のことだった。
    救急車が向かいの履物屋の前に止まったことに、翔太が気付いたのだ。
    4人で慌てて外に出ると、チエばぁちゃんが担架の上に横になって、救急車の中に運ばれていた。

    「どうしたの!?チエばぁ大丈夫なの!?」

    翔太が救急隊員に尋ねても相手にされない。
    救急車は迅速に走り去って行った。


    ********


    数時間後、チエばぁちゃんの訃報はあっという間に町中の耳に入った。
    病院の控え室では、翔太が声にならない声を上げて泣いている。

    「どうして……!!!どうしてチエばぁが死ぬんだよ!!昼まであんなに元気だったのに!!それにお腹がすいたらいつでもおいでって!!!おはぎをご馳走してくれるって!!!あれ……、嘘だったの!?」

    翔太の声が院内に響く。
    町中も同じように深い悲しみに包まれていた。
    トネばぁちゃんもまた、目を閉じて思い出を辿ってるかのように座っている。


    ********

    ~回想シーン~
    それは10年前。
    翔太が産まれる前のこと。
    トネばぁちゃんとチエばぁちゃんは、履物屋の縁側でおはぎを食べ、お茶をすすりながら話している。

    「もうすぐ孫が産まれるそうじゃのう。」

    チエばぁちゃんはお茶をすすりながら言った。
    すると隣でおはぎを食べているトネばぁちゃんは、

    「相変わらずおはぎだけはうまいのぅ。……ん??何か言うたか??」

    「もうわしらも孫が出来る歳ということじゃ。早いのぅ。孫の代にはこの町も、花や草木が生えとるといいんじゃが……。」

    チエばぁちゃんがそう言うと、その一言で思い出したかのようにトネばぁちゃんが語り始めた。

    「チエ!!そのことなんじゃが、いいことを思いついたぞ!!この町全体を傘で包むんじゃ!!そうすれば酸性雨の影響は受けんし、晴れた日には傘を閉じればいい。これでこの町にも“花畑”が出来る!!どうじゃ、名案じゃろ!!」

    ここまで来ると、チエばぁちゃんは感心すらしていた。

    「そんな大きな傘誰が作るんじゃ。もしそんな傘が作れたらな、わしも町の人全員分の履物を編んで、その“花畑”とやらをわしの履物を履いた人で埋め尽くしちゃるわ。」

    トネばぁちゃんはそれを聞いて、

    「それはええ案じゃ!!!それが出来ればこの町の英雄じゃな!!!わっはっは!!!」


    ********


    「……あさん!!お母さん!!!」

    トネばぁちゃんは娘の呼ぶ声に目を覚ました。

    「お母さん、そろそろ帰るよ。」

    「そうじゃな。」

    そう言って病院を出た。
    翔太は父におぶられ、喉をヒクヒク言わせながら顔を背中をうずめていた。