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見城徹

福田さんは絶望的な精神の暗闘をしたことがないんですね。それは悪いことではない。むしろ幸せなことです。「一般的」「常識的」「既成概念的」「共同体的」なものとクラッシュすることなく済んだ。吉本隆明は「共同体」にとっては「異端」です。特に若い時はそれが顕著です。僕もずっと「異端」を自覚して生きて来ました。多分そのままで人生を終えるでしょう。[マチウ書試論]が難解であるけれど、圧倒的に美しいのはそこに異端の人生を生きざるを得ない一人の人間の孤独な心情が投影されているからです。[マタイ伝]を文献として読んでも吉本にとっては意味がありません。学説や解釈や定説などどうでもいいのです。[マタイ伝]を血を流し、葛藤する一人の人間の精神の営為の表現として吉本隆明はどう読み、どう批評するのか?思想的にもプライベートにおいても絶望的な暗闘を繰り広げる吉本隆明の矛盾し錯綜する魂の絶唱。それが[マチウ書試論]です。

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