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見城徹

イギリスの不世出の名ラガーといわれたある選手が、ある大試合でタイムアップぎりぎりに逆転のトライを挙げた。大観衆は総立ちとなって歓声を上げたが、レフリイの無情のホイッスルが鳴り、寸前に反則がありトライは認められず、そのままノーサイドとなって試合は彼のチームの負けとなった。 しかし試合後も、あの時のレフリイの判定が正しかったかどうか、しきりに議論の的になったが、当の選手は、 「ラグビーの試合ではレフリイは神に等しい」 と一言いっただけで、彼は一切ものをいわなかった。当時のこととてビデオテープもなく、判定が正しかったかどうかは遂に判定されずに終ったが、人々はその惜敗に奮起して次のシーズンの彼の活躍を期待したが、第一次大戦が始まり、世の中はもはやラグビーどころではなくなった。 その戦争の最中、ある激戦地の野戦病院で、ある軍医が重症を負った一人の兵士を看護した。兵士の認識票を見て、医者は驚いた。ラグビー気狂いだった医師にとっては忘れ難い名前、かつてのあの大試合のヒーローが、この重症の兵士だった。 それを知って医師は看護に専心したが、傷は重く、遂にその兵士は死んだ。 彼の臨終の際、すでにファンと選手として相識る中になった医師が、かつての名選手に、何かいい残すことはないか、と尋ねた時、死に際の懺悔の聴聞を終った後、件の選手はかすかに唇を動かし、聞きとり難いほどの低い声でいった。 「あの試合のあのトライは間違いがなかった。レフリイが間違っていたのだ」と。 一生をかけた遺言としての、この言い訳を信じぬものがどこにいるだろうか。 ⬆︎ これが石原慎太郎[男の世界]の中の《男の言い訳》の文章です。 僕はこれを読んでラグビーを生涯やることを決めました。

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見城徹のトーク
トーク情報
  • 見城徹
    見城徹

    ↑ 「最低でもホームラン」って、ホームラン以上に何があるのか?実は謎です(笑)。

  • 見城徹
    見城徹

    試合終了。2対1でドジャース勝利。大谷翔平は打率.310。ホームラン54。打点130。盗塁59。素晴らしい。最終戦に満足して、これから寝ます。

  • 見城徹
    見城徹見城徹

    ↑ 尾崎豊の事務所[アイソトープ]を作る時、
    尾崎豊と鬼頭明嗣を連れて尾崎の実家を訪ね、ご両親に仁義を切った。玄関近くの狭い日本間のちゃぶ台に出前の鮨が並び、ビールで乾杯をした。ご両親は大喜びで迎えてくれて、僕はホッと胸を撫で下ろしたのを覚えている。角川書店(現・KADOKAWA)のサラリーマンでありながら尾崎豊の事務所を作るなどと言う無謀なことをよくしたなあ、と今となっては思う。
    あの日が無ければ尾崎豊は復活しなかった。
    しかし、あの日が無ければ尾崎豊は死なずに済んだかも知れない。今さら考えてもしょうがないことだけど。
    あの日、尾崎豊の実家からの帰り道、僕たちは希望に溢れていた。

  • 見城徹
    てんあつてんあつ

    おはようございます。

    今朝もワタクシ的ルーティンから。
    見城さんの過去ログからは2018年8月と2021年7月のトークをピックアップさせていただきました。
    小説[二人の嘘](幻冬舎 刊)の感想文大会は非常に面白かったですね。当たり前なのだけど、同じ小説を読んでも人により着眼点が違い、自分では気づかぬところを発見させていただいたりと。もうすっかり懐かしいです。

    ということで9月月末、今日もかけがえの無い1日を。