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見城徹

[噂の眞相]に書かれたことは本当のこともあったし、デタラメなこともあった。正確に言えば、僕の場合は一つの記事の中に本当と嘘がいつも入り混じっていた。角川書店のサラリーマン時代、[噂の眞相]の記事のせいで何度か辞表も書いた。僕はサラリーマンとしては派手過ぎたんだと思う。臆面もなく言うが、僕は仕事で巨大な結果を出し続けていたし、長年の恋人はテレビに何本かのレギュラーを持つ有名人だった。書かれて何度も困ったが、憎いと思ったことは一度もない。本当でも嘘でも記事の視点にエスプリがあった。インテリジェンスがあった。人生対する独特の構えがあった。廃刊を聞いた時、がっかりした覚えがある。わざと真実をズラす手法はかえって真実の背後にあるものを鮮やかに照らし出した。それは書かれた者にしか解らない。[噂の眞相]はジャーナリズムというよりは強い信念に貫かれたゴシップ誌だったように思う。[噂の眞相]のような複雑な雑誌はもう二度と出て来ないだろう。

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