見城徹のトーク
トーク情報見城徹 K0183K0183 見城さん、755の皆さま。
『海のシンバル』を読み終えて、深い余韻に浸っていました。
気送管という細い管の中でしか言葉を交わせない二人。あの限られた通路は、どこか人生そのものに似ている。不器用な二人は、どこも似てない似たもの同士。伝えられる言葉には限りがある。一方的に送り続けることも、受け取り続けることもできない。届くかどうかもわからない。それでも、真心を込めて送り出す。
「僕は、君にちゃんと傷付けられて、幸せだった」
今、少しだけわかる気がします。
痛みを引き受けて、その人を心から愛し切った者の言葉なのだと。
私にも、そう言えればよかった人がいる。傷付くことを引き受けられなかった。周囲に振り回されて、大切なものをどこかに置き去りにした。今さらその本当の価値に気づいても、もう何一つ戻ってこない。
それでも、あのとき確かに、自分の人生のすべてを賭けて愛そうとしていた。その純粋さだけは、今も心の底に、消えずに沈んでいる。
傷付くことを引き受けた時間こそが、愛した証になる。傷付かなかったことの方が、ずっと深く、消えない傷になって残る。
この物語は、私の海のいちばん深い場所に沈んでいた『自分』を、静かに掬い上げてくれる。
だから、読み終えた今も、海の中でシンバルの音が響き続けています。
「あなたが本当に守らないといけなかったものは、なんですか?」




