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ikutama

高校生活、風と空と海、恋、友人との議論、読書。それ自体は決して特別なものではないが、「何のために生きるのか」と根源的な問いを持って接すると、それぞれから特別な答えが返ってくる。 「気づく人」と「気づかない人」、「動く人」と「動かない人」、同じ場面に接しても、時間の重みが圧倒的に変わる。 人生が詰まったエッセイ、大変勉強になります。

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    ikutama
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    ある漢の生涯〔幻冬舎文庫〕石原慎太郎
    まさに別世界の体験。ドキドキしながら、一気に読了。危う過ぎて目が離せない。人も動物、死ねば終わり。命を張ってナイフで秩序を作る。何に命を張るのか、それが漢の意地。人知れず命を懸けて勝負する漢の強さに魅せられた。
    漢の強さとは、勝負の匂いに敏感であること、痩せ我慢できること、寛容であること。
    漢は修羅に負けない強さを磨かなければならない。

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    見城徹見城徹

    静岡新聞、僕の連載コラム[窓辺]です。
    『成生』(2019.2.25掲載)

    東京駅発16時3分ひかり479号に7人で乗る。17時4分に静岡駅に着く。用意していたバスハイヤーに乗って葵区鷹匠にひっそりと佇む店に入る。カウンター7席のみ。至福の時の始まりだ。
    大阪に僕が西日本で一番美味いと思っている『カハラ』という店がある。そこのオーナーシェフの森さんに「見城さんの故郷に日本一美味しい天麩羅屋があります。是非行ってみて下さい。」と言われたのが『成生』を知った最初だった。
    「天麩羅とはこんなに美味いのか」と天麩羅の概念が変わった。以来、2ヶ月に1回のペースで通い続けている。
    秋元康、小山薫堂、福山雅治、熊谷正寿、堀江貴文、藤田晋、前澤友作、小泉純一郎氏ら、各界の色んな方をご招待しているが例外なく全員が感嘆の声をあげてくれる。
    往復の新幹線、車のチャーター代、食事代はもちろん僕持ち。7人のカウンターを貸し切りにして僕の接待の切り札として使っている。
    魚介も野菜も静岡産にこだわっている。季節によって揚げる素材も変わる。
    新たまねぎ、ヤングコーン、あさはたレンコン、大浦牛蒡、メークイーン、鯵、鰆…。2つの鍋を使い分けて余熱まで計算して絶妙のタイミングで供される。
    味を閉じ込めるというのはこんなに旨味が増すということを初めて体験した。
    1年前から予約を入れるのだが、それでも取りにくい。死ぬまでにあと何回通えるだろうか。店主・志村さんの天麩羅は僕の生き甲斐の1つになっている。

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    ikutama

    お客さんに薦めたくなる店、切り札として使う店。
    それぞれの期待に応えることが、新たな信頼関係を作っていく。既成概念を変えるものに出会えることが、人間関係の醍醐味。天麩羅の概念を変える天麩羅、食べてみたい。

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    見城徹見城徹

    静岡新聞夕刊の僕の連載コラム[窓辺]第7回目です。
    『清水南高』(2019.2.18掲載)

    高校からの下校途中、西折戸から乗ったバスを新清水で途中下車し、清水銀座の戸田書店によく立ち寄った。50年前の清水銀座は賑わっていて戸田書店は人で溢れていた。小田実「何でも見てやろう」、柴田翔「されどわれらが日々―」、五味川純平「人間の條件」、高橋和巳「邪宗門」等は戸田書店で買い求めた。
    僕は本の巻末に買った日と書店、読了日を書く癖がある。蔵書を整理すると日記を付けていたせいもあり、あの頃の自分の心情が蘇ってくる。
    「お前は何のために生きているんだ」
    受験勉強に追われながら毎日そんな問いを自分に突きつけていた。
    本を読む度にその世界に圧倒され、打ちのめされた。決して楽しい読書だったとは言えない。しかし、振り返ってみると高校時代の読書は今の僕を形成しているとハッキリと思う。大学に入って学生運動にのめり込み、挫折し、廣済堂出版に就職後、角川書店に移り、やがて幻冬舎を作った。
    その原点は清水南高の風と空と海、初恋に涙し、友人と議論し、読書に入れ上げた3年間にあると思っている。
    「月刊カドカワ」の編集長になった33歳の頃、親しかった楠田枝里子を清水南高や三保の松原、日本平に案内した後、高校時代によく通った清水銀座の「富士」という喫茶店に連れて行ったことがある。そこで紅茶を飲みながら彼女が言った言葉が忘れられない。
    「なるほど。この町であなたは今の見城くんになったのね」
    あの頃の僕を抱きしめたい気持ちだ。

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    ikutama

    高校生活、風と空と海、恋、友人との議論、読書。それ自体は決して特別なものではないが、「何のために生きるのか」と根源的な問いを持って接すると、それぞれから特別な答えが返ってくる。
    「気づく人」と「気づかない人」、「動く人」と「動かない人」、同じ場面に接しても、時間の重みが圧倒的に変わる。
    人生が詰まったエッセイ、大変勉強になります。

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    見城徹見城徹

    静岡新聞夕刊、僕の連載コラム[窓辺]第9回『折戸の海』(2019.3.4掲載)

    人生最大の窮地はMBO(経営陣による買収)による上場廃止を発表した時だった。2010年11月の初旬から臨時株主総会が開かれた翌年の2月15日まで、ケイマン諸島に突如設立された謎のファンド「イザベル」との熾烈な株の攻防戦は今も鮮やかに記憶に残っている。僕が全株の58%は所有していたが、相手に1/3強の株を握られ、敗色は濃厚だった。
    上場廃止は株主総会で出席株数の2/3以上の賛成が必要なため、否決されれば銀行から個人として借り入れた数十億の借金を残したまま、正体不明のファンドを抱え、上場を維持しなくてはならない。睡眠3時間にも満たない日々が続いた。最初は狼狽したが、徐々に腹がくくれてきた。やるだけのことは全力でやり切って、ダメなら潔く散るしかない。
    「かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ 大和魂」
    吉田松陰の歌が胸に沁みた。
    臨時株主総会の前日、僕は折戸の海岸に佇んでいた。自然に体がここに向かっていたのだ。高校時代、何か悩みや辛いことがあると、放課後、砂浜に出てずっと海を見ていた。この砂浜には僕の青春の涙と汗が埋まっていた。海を見ながら心が澄んで行く気がした。翌朝、会社から臨時株主総会に向かう僕に取材陣がマイクを向ける。
    「戦場に行って来ます」
    それだけ答えて自分の車に乗り込んだ。雪が積もっていた。
    結果は上場廃止が決議され、逆転で僕が勝った。報道陣が取り囲む。答えながら僕は初恋の彼女と歩いた折戸の海を思い出していた。

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    ikutama

    胸に沁みる吉田松陰の「かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ 大和魂」。読書をして様々な言葉に出会って嬉しくなるが、本物の苦しみと向き合ったとき、輝いていた言葉が雲のように消えている。
    最後は覚悟。疲れを癒し、原点に戻らせるのは自然。人生に彩りをくれる恋。

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    見城徹見城徹

    静岡新聞夕刊の僕の連載コラム[窓辺]第10回『社宅』(2019.3.11掲載)

    静岡県清水市吉川450。小糸製作所静岡工場の社宅の住所である。
    1950年12月29日、僕は見城正平、寿子の長男としてここで生まれた。以後、高校卒業までこの住所に暮らすことになる。
    2007年、NHK BSの「わたしが子どもだったころ」の僕の回の撮影で、中学、高校と過ごした社宅のアパートを訪れたことがある。奇跡的にアパートが残っていて小糸製作所の好意で入室が許可されたのだ。我が家だった部屋の小さな佇まいに胸を打たれた。暮らしていた当時は何の不自由さも感じなかったが40年経ってみるとその慎ましさに涙が溢れた。あの頃は一生を清水で終えるものだと思っていた。
    「9500万人のポピュラーリクエスト」という洋楽チャートのラジオ番組があった。3畳くらいの自分の部屋で必死にチューニングして聴いていた。プレスリー、ビートルズ、ベンチャーズ、ビーチボーイズ…。小遣いを貯めて清水銀座の「すみや」で彼らのレコードを買い求めた。
    高校1年の6月にビートルズが来日した。八方、手を尽くしたがチケットは手に入らなかった。テレビが映し出すコンサートを全身を目と耳にして聴いていた。坂本龍一、松任谷由実、尾崎豊、浜田省吾、YOSHIKI、福山雅治…。僕が錚々たる日本のミュージシャンたちと互角に付き合えて来たのはあの頃のお陰だと思っている。
    清水の小さな社宅でビートルズに夢中だった少年は、今、ほんのちょっと日本の音楽シーンに影響力を持っている。

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    ikutama

    Beatlesの魅力を知ったのは大学生の頃。ポールの声、ジョンの生き様、ジョージの寡黙さ、リンゴの優しさ、Beatlesの音楽とそれぞれの人間性に魅了された。音楽は一足飛びに感情を連れていく。尾崎豊、浜田省吾、坂本龍一、音楽に励まされて生きてきた。見城さんのことを知るずっと前から見城さんの影響を受けてきた。
    不自由な環境が人間を鍛える。苦しみが輝きを生む。誰にでもチャンスはある。見城さんのエッセイを読み、今日も励まされました。

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    ikutama

    見城さん、拍手とリトークありがとうございます。755の皆様、拍手ありがとうございます。私にとって755は学舎です。ドキドキしながら755へ書き込みを始めて5ヶ月、新生活が始まったような新鮮な日々です。